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自分にとって哲学とは何か?若松英輔『考える教室 大人のための哲学入門』の感想・レビュー

2021年8月21日 2021年11月19日

「考える教室 大人のための哲学入門」感想レビュー

様々な情報が溢れかえっている現代。

最近だとどのメディアでも、コロナやワクチンについての情報が錯綜してますよね。

何が本当か分からないからと言って情報を垂れ流していくのではなく、きちんと自分の考えを持って向き合いたいと思う今日この頃です。

そんな中で、「考えること」をテーマに取り上げているこちらの書籍を見つけました。

ということで、今回は若松英輔さん著「考える教室 大人のための哲学入門」を感想を交えてご紹介していきます!

こんな人にオススメ!


・哲学に興味があるけど何から読めばいいか分からない人
・有名な哲学者の考えをかいつまんで知りたい人
・「考える」とは本来どうあるべきか知りたい人




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「考える教室 大人のための哲学入門」ってどんな本?

本書で出てくるのはソクラテス、プラトン、デカルト、アレント、吉本隆明の5人。

この5人は、時に批判を受けながらも人生を生き抜いた、世界を代表する哲学者や思想家たちです。

本書の目的はこの5人の哲学者たちと名著を通して対話しながら、「自分にとって哲学とは何か」を考えていくこと。

「読む」とは書き手と読み手の対話です。

偉大な哲学者たちだからと言って、その考え方をそのまま受け入れるのではありません。自分だったらこう考える、自分だったらこう行動する、と自分なりの哲学を探していくことが大事です。

本書の中ではそれぞれの名著からいくつかの文章が紹介され、著者である若松さんが分かりやすく掘り下げてくれています。

しかしそれをそのまま読んで終わりにするのではなく、「自分ならどう読むか」「この本との対話で自分にとって最も重要な問いは何か」を見つけてみましょう!



考える教室 大人のための哲学入門」の感想レビュー

「考える教室 大人のための哲学入門」感想レビュー

「対話する」ことについて(プラトン『ソクラテスの弁明』)

古代ギリシア時代のソフィスト(弁論家)は、多くの金銭をもらう代わりに、多くの人々の前でこの世界のことわりや人生の意味を教えようとしていました。

それに対してソクラテスはというと、求めたのは金銭ではなく人々との対話でした。

教えることではなく、問いを深めることを試みたのです。

ここではソクラテスの弟子であるプラトンが書き記した、「ソクラテスの弁明」からソクラテスの考え方を3つピックアップしていきます。

雄弁だからといって本当のことを言ってるとは限らない

ソクラテスの弁明は、「言葉は真実を伝えるものだと信じ込んではならない」といった警鐘から始まります。

例えばその人がはっきりしゃべっているから、雄弁であるからといって、本当のことを言っているとは限らない。

逆にうつむき加減で素朴な言葉を使って話している人が、本当のことを語っていることもあるとソクラテスは言います。

これって例えば今のメディアのあり方にも同じことが言えますよね。

博識だと言われている人がコロナやワクチンについて専門用語を使って、さもそれが100%真実かのように語っていることがあります。

そしてそれが果たして本当に正しいのかを、自分で吟味しないまま信じ込んでしまう人もたくさんいます。

テレビの情報が本当に正しいのか考えてる女性
ミナ
ミナ

正直どの情報が正しくてどの情報が誤っているのか、一般人である私たちが見分ける事はかなり難しいです。
それでも思考をストップせず、常に「考える」ことをしていきたいですね。


何を言うよりどう言うかが大事

うまく話すことと本当のことを話すことは違います。

本当のことを言うとき人は言葉に詰まったり、そもそも言葉にならなかったりしませんか?

でも言葉にならないからといって、それが嘘だということにはなりませんよね。

言葉にならないのはその人の中に何もないからではないです。

ソクラテスは話がとても上手な人でした。

しかしその話し方は、美辞麗句で飾り立てる話し方ではなく、聞く人が無造作に感じるような言葉を使って話すスタイル。

自分で生きて会得した言葉で、無造作に聞こえるかもしれない言葉で人々と対話をしていました。

つまりソクラテスは、「何を言うかよりもどう言うか」を大事にしていたのです。

例えば1冊の本を読んで、それを要約してみんなの前で発表することになったとします。

その場合、

「何を言うか」=要約することができる。誰が読んでも同じ内容が読み取れるように表現できる。

しかし、

「どう言うか」=要約ができない。つまりその人の語り口は要約ができず置換が不可能なもの。

こういった要約したり代替したりすることができないものの中に、本当のことを見出していくことが大事なのだとソクラテスは考えていました。

今はインターネット上で要約された情報を簡単に読むことができますが、言説ではなく出来事を経験するには、自分で本を開いて我が身をそこに投げ出さなくてはならないのです。

このネット社会において「この本の内容を知りたい」て思って検索すれば、大事なところをかいつまんで要約している記事が山ほど出てきます。

その本に大体どんなことが載っているのか、どんなことが学べるのかを知りたい人はそれで事足りるかもしれません。

でもその本の著者と対話するには、または著者の経験を追体験するには、本当のことを知るには、自らその本を手に取って読む必要がありますよね。

ミナ
ミナ

私もあらすじや口コミを確認するときがありますが、自分が読みたいと思った本は必ず手に取って自ら読みます。


自分が無知であることを知ること

ソクラテスは自分が無知であることを知っていました。だから人々との対話を続けていたのです。

知らないということを知る=無知の知

自分は不完全であると思う状態こそ、人間が最も知恵に満たされている状態だとソクラテスは言います。

「人間性」は誰しもが等しく与えられたものなので完全です。しかし「人間性の状態」は誰もが発展の途上にあるので不完全です。

その人間性を育んでいくことで人生を深めていけます。

そしてソクラテスが人間性の状態が不完全だと自分でわかるのは、自分が完全に知恵を有しているものではないということをよく知っているからです。

だからソクラテスは多くの人たちと対話をして、問いを深めていくことで人間性を育んでいったのでしょう。

確かに「自分は完璧な存在だ」とか「完全に1から100まで万物における知識を持っている」と思っている人はほとんどいないですよね。

それなら世の中における自分が完全ではないと知る人たちと、ソクラテスの違いとは何なのか?

ミナ
ミナ

それは無知の知だと知って終わるか、そこで終わらないで行動するかってところにあるんでしょうね。


「考える」ことについて(デカルト『方法序説』)

方法序説とは、方法に関する講話や方法についてという意味です。

デカルトがこの本で語っているのは、

・知性の不完全さ
・人生は様々な意味での旅であること

「自身が語った言葉以外は信用しないでほしい」と述べていることから、読み手と直接対話することを願っています。

また徹底的に自分の経験を語っており、引用や注釈もありません。己の経験を哲学として樹立しようとしているのです。

ここではそんなデカルトの「方法序説」から、デカルトの哲学を3つピックアップしていきます。

頭でわかることとそれを血肉化することは違う

事実を確認するのは簡単ですが、「それを生きる」のはとても難しいことです。

言い換えると、頭でわかることと「それを血肉化する」ことは全く異なるということ。

また、早く分かろうとすることは叡智に関する冒瀆だとデカルトは言います。

大切なのは早く知るよりも「確かに知る、深く知る」こと。そして知るべきことを知るべき時に知るということです。

本を読んでそれを頭や心に留めておくことがはできるけど、実際にそれを実現したり自分の生活に落とし込むのはまた別の作業。

頭ではわかってても、自分の体の一部のようにするには難しいですよね。

ミナ
ミナ

上辺だけを知るのではなく自分のことも絡めて深く掘り下げていく。そんな読書が出来るようになりたいものです。


何かを学ぶことと何かを生きる事は違う

学校や塾、本を読むことなどでどれだけ勉強したとしても、人から教えられたことしか学ぶことができません。

デカルトは学校でたくさん学びますが、最終的に「自分で探さなければならないことは、自分で探すしかない。」と気づきます。

そして「真の学びとは、勉強の外に自分が出会うべきものを見つけることなのではないか。」と考え始めたました。

例えば大学で経営学を体系的に学んだとしても、実際に自分が社会に出て1から働いてみて、成功も挫折も味わって様々なことを経験していかなければ、経営学を「本当に学んだ」とは言えないということ。

もっと細かい例だと、社会人になって最初の研修でその会社の業務やサービスについて学んだとしても、実際に現場に出て自ら経験しないことには「本当に学んだ」とは言えないということです。

ミナ
ミナ

現場では研修してただけではわからなかった新しい学びや気づきもありますしね!

他人の解説で理解したと思うことは、真の学びとは言えません。

つまり、何かを学ぶことと何かを生きることは違うのです。

そしてそのどちらかだけではなく、私たちは両方を同時的に生きなければならないとデカルトは解き明かしてくれています。


他人を変えるのではなく自分が変わる

デカルトはこの本を通して世界を変えることではなく、自分が変わることを試みてました。

自分を変えようとしてるだけなので誰かに真似してほしいわけではなく、これを1つの例として読者との対話のきっかけになれば良いのではないかと考えていたのです。

他人を変えようとする女性と、自分が変わろうとしてる女性

デカルトは人が他人に影響与えようとする時、そこにはとても愚かな何かが潜んでいることに気づいていました。

人に影響を与えることばかり考えていると自分のことが見えなくなり、言葉が離れていってしまう。

だから自分の言動が、本当に自分の魂を鍛えていくために良いことなのかを考えてみなければならないのです。

現代では様々な方法で他人に自分のことを知ってもらったり自分の考えを布教できたり、つまり他人に影響与えることが簡単にできてしまいます。

私が運営しているこのブログだって、多かれ少なかれ他人に影響を与えることがあると思います。

ミナ
ミナ

もちろんたくさんの人に読んでもらいたいと言う気持ちもあるけど、「誰かの人生を変えよう!」とか大それたことをやろうとするのではなく、自分自身がいい方向へ変われる場だったり、読んでいる人の何かの小さなきっかけになる場になれるようにしていきたいです。


「働く」ことについて(アレント『人間の条件』)

アレントは働く事は人にとって根源的な営みなのに、それについて書かれた哲学の本がないことに気づきます。

衣食住=生活の基本ですが、これらの営みについての哲学は、意識や言語、国家などの問題に比べると軽んじられてきた傾向があったのです。

そんな経緯もあり「人間の条件」でアレントは、労働、仕事、活動について再定義をしています。

ここではそんな「人間の条件」からアレントの哲学を3つピックアップしていきます。

「仕事」と「労働」の違い

私たちは仕事も労働も同じ意味で使うことが多いですが、アレントは両者を以下のように意味づけていました。

「仕事」の定義

・何かを作ること。
・自然環境と際立って異なるものの人工的世界を作り出すこと。

「労働」の定義

・生命活動と深く結びつく営みのこと。
・生命それ自体。
・人間の根源的な尊厳のようなものが含まれている。

「労働」の定義からわかることは、万人が常に「生きる」という労働に従事しているということ。その人にしか行えない固有な意味を持った命を営んでいるということ。

しかし現代では彼女の定義する労働を忘れたまま、仕事の評価によって人の生き方や人のあり方を評価する世の中になっています。

仕事の上に労働があるのではなく、命と直結した労働の上にこそ真の意味での仕事が開花するのだとアレントは教えてくれます。

ミナ
ミナ

よく寝食を忘れて仕事に没頭するとか、犠牲を払わなければ大きな事は成し得ないとか言いますが、アレントの「労働」の意味を知るとそんなことはないと思えますよね。

私は生きてく上で個人的に1番大切だと思っているのは、「丁寧な生活をする」ことです。

丁寧な生活っていうのはきちんと栄養あるご飯を食べて、たっぷり睡眠時間をとって、心も体も健康な人間として生きること。

そういった生活がベースにあるからこそ、元気に仕事に行ける、仕事で力を発揮できると思っています。

だからこのアレントの仕事と労働の意味の違いにすごく腑に落ちてます。


苦痛や心の痛みは他者とわかりあえない

アレントは肉体がすべての財産の根源となると考えています。望んでも人と分有できない唯一のものだからです。

アレントは肉体を以下のように定義しています。

「肉体」の定義

苦痛や心の痛み、快楽や喜びを味わう器官

これらは他者と分かち合うことはできません。そして心身の痛みも重要な労働です。

労働の本当の意味は本人にのみ確かであって、ほとんどの場合は他者には隠れたもの。他者には理解されないものであることが前提なのです。

人の苦しみや悲しみはその人にしかわかりようがない。その世界を深めるのが労働の現場なのだとアレントは述べています。

ミナ
ミナ

じゃあよく悲しいこととかがあって、家族や友達が分かち合ってくれているのは何なんだって話なんですが、あれは他人が聞いてくれることで気持ちをすっきりさせたり整理させたり鎮めさせたりしているだけで、実際に自分が感じた痛みとか苦しみ悲しみは自分にしか永久にわからないんですよね。

それでもやっぱ他人に聞いてもらうと気持ちが軽くなりますよね。


独りであって独りでない

「活動」の定義

・人間が1人ではできないことが含まれている。
・あるいは事柄の介入なしに直接人と人とのあいだで行われるもの。

アレントは「活動」をこのように定義しています。

ソクラテスやデカルト、アレントにとって真の意味で「考える」という活動は、個において問いを深めること。

いつも他の個とつながることで初めて個であり得る。独りでありながらも心の奥で他者と深くつながる。

それが活動の真意なのです。

そして独りでいながら他者と深く結びつく。あるいは結びついていることを発見する。

それが活動の意義だとアレントは教えてくれます。

たくさんの人に囲まれる女性

矛盾しているようにも思えますが、以下の詩を読んでみると、アレントの「活動」についての意味がしっくりくるかもしれません。

暗やみの中で一人枕をぬらす夜は
息をひそめて
私をよぶ無数の声に耳をすまそう
地の果てから 空の彼方から
遠い過去から ほのかな未来から
夜の闇にこだまする無言のさけび
あれはみんなお前の仲間達
暗やみを一人さまよう者達の声
沈黙に一人耐える者達の声
声も出さずに涙する者達の声

(ブッシュ孝子「白い木馬」より引用)

この詩を書いたのは1974年に28歳の若さで亡くなったブッシュ孝子さん。

彼女は乳がんが見つかり闘病生活をおくる中で、たくさんの詩を残しました。

もし私たちがこの現場に立ち会ったとしても、外からは何も感じることはできないかもしれません。でも彼女の内部では、世界観を覆すような出来事が起こっていたのだと筆者である若松さんは言います。

ミナ
ミナ

私はこの詩にある「遠い過去から ほのかの未来から」と言う箇所がとても好きです。この詩は悲しみや痛みを強く叫んでいますが、違った意味合いでも考えることができるのかなと思います。

例えば読書は一見独りで行っているように思えますが、実は著者との対話であり、その著者が最近の人でなく遠い昔の人だとしても、本を通して対話ができる。

読書だけでなく、日常で普段私たちが使っている便利なものや生活様式、言語や文化、それらすべてが遠い過去に生きた先人たちの思いや考えに触れているとも考えられます。

そして今度は自分たちがこの先の未来に、自分たちの思いや考えをいろんなものに乗せて託すことができる。

そう考えると、この「独りであって独りでない」の言葉の意味がしっくりきます。


おわり

おわりに

いかがでしたか?

昔は現代のように便利なものが溢れている時代ではありませんでした。

何か分からないことがあったらスマホやパソコンですぐに調べることができる私たちとは違い、自分たちで熟考に熟考を重ね、実際に行動して自分たちが納得できる答えを見つけていた哲学者たち。

本書では今回ご紹介したもの以外にも、

・「魂」とは何か
・学びは「畏れ」から始まる
・自問自答の「力量」をつける
・「良識」とは何か
・手を使って仕事をする大切さ
・「幻想」とは何か
・見えないものに人生を賭けること
・「こころおどり」について

など、ここに書き出した以外にも自分の考えを深めていくためのヒントがたくさん載っています!

特に4章では日本人の思想家、吉本隆明さんの「共同幻想論」が紹介されてるのですが、これまた面白いです。

誰もが無意識に「在る」と信じているもの(例えば国家など)は、実体のない「幻想」ではないか、など「幻想」の本質を探究したのが吉本さんです。

「哲学」と聞くと、とっつきづらいイメージをもってしまう人もいると思いますが、本書では著者の若松さんがそれぞれの哲学者の考えを分かりやすく掘り下げてくれているので、ぜひ手に取って読んでみてください!

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