2021年8月22日 2021年11月19日
人はどういうときに、図らずしも心を動かしてしまうのか。
今月の初めに「行動経済学入門」を読んで、人の心の癖や動き、本質などにさらに興味を持ち、ざっくり学べそうなこちらの本を手に取りました。
↓行動経済学入門の記事はコチラ↓
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お金と心の不思議な関係とは?ハワード・S・ダンフォード『行動経済学入門』の感想・レビュー
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今回ご紹介する本は、日本文芸社から出版されている「眠れなくなるほど面白いシリーズ」の社会心理学編です。
こんな人にオススメ!
・心理学に興味がある人
・心理学の有名な現象や実験をざっくり知りたい人
・人の心の本質を知りたい人
目次
Audibleで「図解 眠れなくなるほど面白い 社会心理学」が無料で聴ける!
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「図解 眠れなくなるほど面白い 社会心理学」ってどんな本?
心理学って言っても「臨床心理学」や「犯罪心理学」など、色々な種類がありますよね。
そもそも社会心理学とはどんな学問のことなのでしょうか?
社会心理学とは
社会の中での人々の心の動きや行動の法則を解き明かし、なぜそう感じてそう行動するに至ったのかを研究する学問のこと。
例えば1人では決してやらないことも、大人数になるとやってしまうことや、偏見・差別なども社会心理学で紐解いていくことができます。
本書ではそういった社会現象から、個人・集団の心理学まで、ざっくりと学ぶことができます。
実験データで裏付けされており、説明と図解がセットで載っているので理解しやすいかつ見やすいかと!
「図解 眠れなくなるほど面白い 社会心理学」の感想レビュー
身近な社会問題と心理学
まずは私たちに身近な社会問題のケースを、心理学を絡めて2つピックアップしていきます!
緊急事態でも人が避難しない理由
例えば地震や台風、集中豪雨など日本は災害大国ですが、もし自分が大きな災害に見舞われたとき、自らの意志で避難すると思いますか?
ニュースやスマホの緊急の通知などで避難指示が知らされると思いますが、もし自分の地域に避難指示が出たら、あなたはすぐに避難できますか?
ほとんどの人は周りの人がどう動くのか確認してから、自分がどうするのかを決めるのではないでしょうか。
「みんな避難してないから大丈夫」
そう判断したばかりに災害に巻き込まれ、最悪命を落とすケースもありますよね。
これは、「今起きていることは緊急事態だ」と認識していないことが大きな要因なのです。
多元的無知
他の人が行動しないことで、自分の不安や疑念を持ちながらも「多分大した事態では無いだろう」と捉えること。
2003年に韓国の大邱で起こった地下鉄火災で多くの人が亡くなったのも、少なからずこの多元的無知が関係しているのかもしれません。
この事件の有名な写真に、煙で車両が満たされているのに、乗客は口元を押さえるだけで座席シートに座ったままという異様な光景が写し出されています。
「煙が出てるけど誰も動かないしたいしたことないだろう」と思ってしまったのかもしれません。
しかし実は大規模な火災が起きていて、逃げ遅れた多数の人が亡くなりました。
もちろん地下鉄会社側のずさんな安全管理や危機意識の低さなどが一番の原因ですが、もし乗客が自ら行動を起こしていれば、助かった命が増えていたのかもしれません。
災害や事故など、他人の動向を見て自分がどうするか決めるのでなく、何か異変が起こったらすぐに疑問を持って自ら動ける姿勢を持ちたいですね。
人は無意識のうちに差別している?
今も昔も人種差別や女性軽視など、あらゆる国や地域で問題になっています。
なぜ差別が起こるのか?そこには「意図せざる結果」という現象が深く関わっています。
意図せざる結果
個人の行動が積み重なって、想定外の大きな結果をもたらすという現象。
例えば私たちが仕事をしている大きな理由って、自分の生活を維持するためですよね。
しかし私たちのその行動が、めぐりめぐって社会全体の利益を高めています。
それと同じで、差別も最初は差別しようと思って始まったわけではないのです。
第一次大戦後の黒人排斥政策は、労働組合の黒人に対する偏見から始まりました。
補足
・ストライキ(スト):労働者が自分たちの要求を通すために、集団的に仕事を放棄すること。
・スト破り:ストライキ中にも関わらず、雇用者側について業務を続けること。
元々、労働組合がストライキをおこしたときに「南部の黒人はスト破りするぞ!」って噂が流れたのかもしれません。
本当にスト破りをしてた黒人もいると思いますが、スト破りをした黒人側から見れば「生活がかかってるから働かなければ」という考えだったんじゃないのでしょうか?
そして労働組合の起こしたストライキによって雇用者は労働者不足に陥り、労働組合から追い出された黒人を雇います。
結果「やっぱり噂ではなく黒人はスト破りするんだ!なんて奴らだ!」という怒りの気持ちから、差別に発展。
いつしか南部の黒人だけでなく「黒人全体がスト破りする」という考えに変化し、「黒人=悪い奴、自分たちの敵」と思うようになってしまったのでしょうね。
人種差別は他人事ではないんですよね。近年はアジア人差別も問題になってきています。
「意図せざる結果」ではなく「意図した結果」おきる差別もある
アジア人差別自体は昔からありますが、最近輪をかけて広がっていますよね。「#StopAsianHate(ストップ・アジアン・ヘイト)」をSNSで掲げる海外のセレブやアーティストがいるほどです。
最近だと、アジア人に対する差別が強くなっている理由の1つとしては、コロナウィルスの発祥が中国だと考えられていることが大きいかと思います。
さらにそれを煽るようにアメリカの元大統領が、コロナウィルスを「中国ウィルス」や「カンフーウィルス」などという言葉を使って、悪いイメージを植え付けていたのも大きな影響を及ぼしていると考えられます。
その報道に影響された国民たちは街中で中国人らしき人を見かけたら暴言を吐いたり、暴力を振るう人もいてニュースにもなりましたよね。
私たちが、欧米の人たちがそれぞれどの国の人なのかあまり見分けがつかないように、私たちアジア人も欧米の人からはそう思われています。
だから日本人であっても彼らにとっては「コロナウィルスを撒き散らしたと中国人が街を歩いている」と判断され、暴言や暴力の的となっているのでしょう。中には「中国人と同じアジア人だから許せない」と思っている人もいるかもしれません。
トランプ元大統領が行った戦略による差別の拡大は、「意図せざる結果」ではなく明らかに「意図した結果」でしょう。
もちろん今回のコロナ騒動だけではなく、歴史の中でこうした偏見が積み重なった結果、アジア人差別が大きくなってるのでしょうね。
職場における心理学
ここまで社会問題における心理学をみてきましたが、ここからは更に身近な「職場」における心理学を4つピックアップして見ていきます!
人は多数派の意見に同調しやすい
自分では「こうだと思う」という考えがあっても、いざ自分以外の多数の人が別の考えを持っていたら、そちらに合わせてしまうことってありませんか?
人は多数派の意見に同調しやすい傾向があります。
同調
何かを判断するときに、どうしても多数派の意見や行動に自分の考えを合わせてしまう傾向のこと。
「アッシュの同調実験」によると、普通なら間違えようのない問題でも、自分以外の全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが判明しました。
しかし1人でも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まります。つまり1人でも反対者がいれば、自分の意見を表明しやすくなるのです。
前職で全マネージャーや営業が集まる会議で、私がなけなしの勇気を振り絞って手汗を大量にかきながら意見を述べた時もそうでした。
私が意見を述べると、それまで黙っていた他の何人かも同調したのか意見に乗っかってきました。
正直あの時は「人の意見を待たずに最初からお前も意見しろよ」とかイラっとしたんですけど、今思えばこれが同調の仕組みだったんですね笑
集団での意思決定は間違った答えを出しやすい
私たちは1人の人間がすべてを独裁的に決めてしまうよりも、全員で話し合い民主的に決める方が好ましいと考えますよね。
しかし集団で決めた意思決定は間違った答えを出しやすいです。その理由として「プロセス・ロス」があげられます。
プロセス・ロス
集団による話し合いの過程において、メンバーが本来持っている素質が十分に生かされず損失が生じること。
このプロセス・ロスが起こる原因としては、発言のブロッキングとフリーライダー効果があげられます。
発言のブロッキング
なにか意見があっても他の人の発言中は発言できないため、思考が停止しやすくなり、結局何も発言できなくなること。
特に10人以上とか人が多い会議だと、思いついても自分の番になるまですぐに発言できないので、その間に「やっぱ言わなくていいか」となることもありますよね。
フリーライダー効果
他人をあてにして、その成果だけにタダ乗りする行為。考えることを放棄して人の意見に乗っかろうとする。
自分が発言しなくても「他の人が発言するだろう」と無意識に周りをあてにしてしまって、気づいたら自分は発言してなかったってときありますよね~。
生産性を上げるカギは労働条件より人間関係
みなさんは生産性向上には何が一番大切だと思いますか?
職場の体制?仕事場の環境?労働日数?勤務時間?
1924年から行われた「ホーソン実験」によると、生産性は労働者を取り巻く人間関係によって左右されることが判明しました。
生産性は物理的な労働条件よりも、従業員を取り巻く人間関係が重要だったのです。
労働条件が良いことに越した事は無いけど、やっぱり働く上で1番大事なのは人間関係ですよね~!そう思ってる人結構多いのではないでしょうか?
人間関係が悪ければそもそも職場に行きたくないし、行ったところで暗い気持ちだったり緊張した気持ちが続くので、結果、生産性が下がる気がします。
逆に人間関係が良ければ職場に行くのが楽しみになりますし、仕事中も明るい気持ちや楽しい気持ちでいられる時間が長いです。その結果、生産性が上がるんじゃないかなと私も思ってます。
報酬はやる気を損なう要因にもなる?
人間関係が生産性向上に大きく関わっていることは分かりましたが、報酬だってやる気アップの要因になって、結果、生産性向上につながるのでは?と思いますよね。
しかし実は逆で、報酬がやる気を損なわせてしまうこともあるのです。
アンダーマイニング現象
内発的に動機づけられている行動に対して外発的な報酬を与えてしまうことによって、内発的動機付けが失われてその人のやる気を損なう現象。
物事に対して面白さを感じて行動するのが「内発的動機づけ」で、報酬を得るまたは罰を回避するために行動するのが「外発的動機づけ」です。
確かに純粋に「楽しいからやりたい!」「自分が気になるからやりたい!」という気持ちが1番やる気をアップさせてくれる気がします。
目的がお金や報酬のためになってしまうと、楽しい気持ちや好奇心が少なくなってきますよね。
おわりに
いかがでしたか? ・見て見ぬふりをするのはなぜか?
ニュースで取り上げられている社会問題から、毎日通っている職場など、色々な現象や心の動きが心理学で説明できてしまいます。おもしろいですよね!
本書では今回ご紹介したもの以外にも、
・あおり運転をしやすい特徴の人とは?
・集団の対立は交流では解消しない
・少数派が多数派の考えを変えるには?
・人は自分の行動に一貫性を持ちたがる
・人が高校野球に熱中するのはなぜか?
・流行に乗る人・逆らう人
・集団によるジェノサイドとは?
など、ここに書き出した以外にも集団や個人、社会における心理学についてたくさん知ることができます!
1つの見出しに対して1つの図解が必ず載っているので、理解しやすいです。とりあえず「社会心理学ってどんな感じなんだろう?」と少しでも興味を持ってる人はぜひ読んでみてください!
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