2021年10月30日 2022年1月29日
現代って本当に便利ですよね~!
何か調べたいことがあればすぐにネットで調べられて、行きたいところがあればたいていの場所は電車やバスで行けちゃいます。
欲しいものだってお金さえあれば何でも買えちゃう時代です。
でも「何でもお金で買える」って本当に良いことなのでしょうか?
そんな疑問が湧いて、手に取った本書「それをお金で買いますか」を、感想を交えてご紹介していきます!
こんな人にオススメ!
・市場主義な社会に少なからず疑問を持ってる人
・「何でも買える世の中」に何やら違和感を感じてる人
・経済学に興味がある人
目次
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Audibleは、本をゆっくり読む時間がなかなか取れない人にオススメ!
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「それをお金で買いますか」ってどんな本?
現代ではいろいろなものが売買されていますよね。
例えば食べ物や家電などといった有形のものから、動画配信サービスや家事代行サービスなどといった無形のもの。
中には添い寝サービスや不満を買い取るサービスなど、ユニークなものもたくさんあります。
何でもお金で買えて便利だなと思う反面、「道徳的にこれはアリなの?」と思ってしまうような売買もあります。
例えば、
・子供の売買
・絶滅危惧種の動物を殺す権利の売買
・他人の生命保険の売買
・広告媒体として自分の体を売買 など
これらは本当にお金で売買すべきものなのか?
売買してはいけないものと仮定して、では一体何が問題なのか?
あなたはすぐにその理由を思いつきますか?
私は「それは売買したらおかしいでしょ!」と感じるけど、じゃあ具体的に何がダメだと感じるの?何でダメだと感じたの?と聞かれるとすぐに言語化できません・・・。
お金で買って許されるものと許されないものを決めるには、社会や人々の生活の様々な領域を律する価値とは一体何なのか、それをある程度定めなければなりません。
この問題を考え抜くかことによって、何もかもが売り物にされる社会において、自分たちがどんな代償を支払わされているのかに気づくことができます。
これが本書の目的になります。
市場主義の社会ってポジティブなイメージしか持ってなかったですが、実はネガティブな面もたくさんあるんですよね。
今回は実際に売り物にされている「これってどうなの?」ってものについて、本書からいくつかピックアップしてご紹介していきます。
「それをお金で買いますか」の感想レビュー
「命」に関わる売買
富裕層だけに有利なコンシェルジュドクター
医者が患者を診るときは、ある程度の時間が必要ですよね。
聴診器を胸に当てたり機器を使って検査をしたりするだけでなく、どんな症状によって体にどんな痛みや違和感があるのか、普段はどのような生活をしているのかなど、問診も大事になってきます。
しかしアメリカの現在の医療システムでは、医者が患者を理解したり、患者からの質問に答えるための時間がほとんどありません。
それくらいアメリカの医者は忙しいそうです。
そこで新たな医療サービスが生まれました。
自分が医者に診てもらいたいと思った当日、もしくは翌日に待ち時間がほとんどなく、かつ余裕のある診察が受けれるサービス「コンシェルジュドクター」です。
ただし誰でも受けれるわけではなく、多額の年会費が必要になってきます。
つまり、お金が有り余ってる人にとってはとても魅力的なサービス。
しかし言い換えると、このコンシェルジュ診療は、別の医者のぎゅうぎゅうに詰まった患者名簿に、さらに他のあぶれた患者を押し込むことで成り立っているのです。
このサービスのおかげで富裕層の患者だったり医者は余裕のある診察や丁寧な診察ができることは間違いないです。
でもお金のない人たちは多くの時間を費やして診察まで待って、自分の番が回ってきたとしても5分、10分、もしくはそれ以下の短時間で診察が終わってしまうわけです。
このサービスがもっと浸透してしまうと、お金のない人たちは緊急を要する容態のときでも長時間待たされる、なんてことにもなりかねないんじゃないでしょうか・・・。
人の死を望む生命保険買取産業
例えばエイズを患っている人や末期疾患と診断された人、つまり余命があといくばくしかない人たちは、誰だって残された時間を豊かに生きたいと願うはずです。
でも「豊かに生きる」ということは、それなりのお金が必要ですよね。(もちろん例外もあると思いますが)
そんな悩みに特化したサービスが、バイアティカル(生命保険買取産業)です。
バイアティカルの仕組み
①投資家が余命宣告された人の保険証券を例えば50,000ドルで買い取り、さらに毎年の保険料も本人に代わって支払う契約を交わす。
②余命宣告された方が亡くなる。
③投資家は10,000,000ドルの死亡保険金を受け取れる。
余命宣告された人が予定通りもしくは早くに亡くなれば収益率は100%ですが、もし余命宣告より長く生きれば収益率はどんどん下がっていく仕組みです。
つまり何が言いたいかと言うと、投資家は保険証券を買い取った相手が早く死ぬように願わなくてはならないのです。
しかし、バイアティカルの仲介業者は以下のようにと述べています。
末期患者が最後の日々を尊厳を保ちつつ、快適に過ごす資力を提供することが自分たちの使命です。
こう聞くと社会的善に貢献しているように思いますが、「人の死にお金を賭けている」という事実は変わりません。
もともとバイアティカルの仕組みを考えた人は、本当に純粋に「末期患者が残り短い人生を有意義に豊かに過ごせるように」と願って始めたのかもしれないですけど、結局お金が絡むと利益を得ようという人たちが集まってきて、本来の目的が埋もれてしまいますよね。
スポーツくじや競馬などのギャンブルと違って、お金を賭ける対象が人の死。しかもその人が早く死ねば死ぬほど自分に多く利益が入る。これをやってる人はどんな気持ちなんでしょうか?
罰金が「料金」にすり替わるとどうなるか
「罰金」と「料金」の違いって明確に答えられますか?
同じ「お金を支払う」でも罰金は罰せられるときに払わなければいけないお金、料金は何かを買う時やサービスを受けるときに自発的に支払うお金。
この2つを混同してしまうことで一体何が起きてしまうのか、何がいけないのか?
例えば世界遺産の1つであるグランドキャニオン。ここに空き缶を投げ捨てれば罰金が生じるとします。
しかしある人が「罰金を払えば空き缶を世界遺産に投げ捨てれるんだ」と、罰金を料金とみなして空き缶をグランドキャニオンに投げ捨てます。
さて、何がいけないかわかりますか?
こういった罰金を料金として扱うことによって、例えば「グランドキャニオンを汚さないでほしい」「自然を大事にしてほしい」という願いや想いを踏みにじってしまうことです。
前述した通り、罰金も料金もどちらとも「お金を支払う」と言う点では何も変わりません。
でも罰金を料金として扱ってしまうことで、他の人たちの大切な想いや願いを侮辱したり傷つけたりすることになってしまうんです。
「お金を払えばたとえそこが世界遺産だろうとゴミを投げ捨てていい」なんてことがまかり通ってしまう世界は嫌ですよね。でも一定数の人は罰金を料金と履き違えているんでしょうね。
貧しい人は子供を産めない?
ここでは実際に罰金を料金として扱っている実例を見ていきます。
中国が人口増加を抑えるための政策として、1979年から2015年まで「一人っ子政策」を実施していたのは有名ですよね。
今でこそ中国政府は2人までだったら子供を持つことを認めていますが、以前はその名の通り、子供を1人までしか産むことが認められていませんでした。
では、どうしてももう1人子供が欲しかった場合はどうしていたのか。または予期せぬ妊娠をしてしまった場合どうしていたのか。
もちろん罰金が定められていました。
その額、31,000ドル(日本円にして約350万)。もちろん貧しい家庭は簡単に支払うことのできない額です。
しかし富裕層であれば350万など、はした金。実際に罰金を料金としてみなし、ふたりめ以降を出産する富裕層が一定数いたそうです。
「そもそも子供を産むことの何が悪いんだ」「お金を払ってるんだから問題ないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
しかしこの行為を認めてしまえば、それはすなわち、「貧しい人は2人目以降を産むな」と言っているようなものなのです。
親子関係に悪影響を生む?
「お金を支払って子供を産む」ということについては、もう一つの問題があります。
1964年、経済学者のケネス・ボールディングは、人口を制限しなければならない国に対しある提案をしました。
それは「出産許可証」の交付です。
ルールとしては、
・女性一人一人に子供を産む権利を与える証書を1枚ずつ交付する。
・本人が使ってもいいし、現行の料金で他人に売っても良い。
子供を産む予定がないのであれば、他人にその権利を売ってお金を得ることができる。2人目以降も産みたければ、他人からお金で買い取ることができる。
経済的に見ると理にかなっているのかもしれませんが、前述の一人っ子政策の問題と同じく、貧しい人は2人目以降を産むことができません。
また、生む前であれ「子供をお金で買った」という事実は残ってしまいます。それが将来、親子関係に悪影響を及ぼすことだってあるかもしれません。
例えば子供を跡継ぎにさせようとしたり、頭のいい大学にいかせようとする親っていますよね。
でも、もし子供が親の望みに反して優秀に育ったなかった場合、「大金を払ってお前を産んだのに」なんてひどいことを、子供に口走ってしまう親もいるかも・・・と個人的には思ってしまいます。
インセンティブの正しい使い方とは
インセンティブ
動機付けや報酬のこと。たとえば人に働かせたり、体重を落とさせたりする手段で使われる。
社会で働いていると「インセンティブ」と言う言葉をよく聞くと思いますが、人間は良くも悪くもこのインセンティブに反応してしまいます。
皆さんが知っているインセンティブってどんなものがありますか?
私は以前働いていた職場でインセンティブ制度があり、店舗の業務成績が良ければ給料とは別に、一人ひとりが報酬を貰えていました。
こういった報酬のインセンティブは良く聞くと思いますが、時として罰金のインセンティブを使う場合もあります。
報酬であれば人々のやる気をアップさせ、罰金であれば規則をきちんと守らせることが出来るように思いますが、中には報酬であれ罰金であれインセンティブが裏目に出てしまう場合もあります。
前述の中国一人っ子政策における2人目以降の出産に対しての罰金は、まさに中国政府の思惑を逆手に取った結果になってしまいましたよね。
インセンティブが用意されてるからといって、物事がすべて良い方向に傾くとは限らないんですよね。もしインセンティブを利用して何かを変えたいときは、それが何に影響するのかを熟考してからでないと取り返しのつかないことになってしまうこともありますよね。
ここでは、そんなインセンティブに関わる2つのケースを見ていきます。
不妊手術をすると現金がもらえるプログラム
アメリカで薬物中毒の女性が不妊手術か長期の避妊処置を受ければ、300ドル(約35,000円)の現金をもらえるといったプログラムがあることをご存知ですか?
実は薬物中毒の母親から生まれた赤ん坊の一部は、生まれた時から薬物中毒だったり、その多くが親から虐待されたり育児を放棄されたりすることがあるそうです。
このプログラムを実施している運営団体は、不幸な子供たちをこれ以上増やさないために、女性たちにインセンティブを与える代わりに不妊手術や避妊処置をさせているわけです。
この話を聞いてどう感じますか?
不幸な子供が生まれる確率が減っていいじゃないか!
そんな風に思う人もいるかもしれません。
しかし薬物中毒の大半の女性は貧困で苦しんでいます。
そのことを考慮すると、このプログラムは一見すると強制では無いように見えますが、女性たちが100%自由意志で手術や処置を受けているとも言い難いですよね。
貧しい人たちの前に現金(インセンティブ)を垂れ下げて、自分たちの望み通りに誘導しているようにも感じます。
生殖能力を、金銭的利益を得るための道具として扱ってしまっているところも問題です。
また「不幸な子供たちを減らす」という点においては良いプログラムかもしれません。でも根本的な解決には至ってないですよね。
その場しのぎだったらいいかもしれません。
でもまず救うべきなのは現在薬物中毒で苦しんでいる女性たちの方ではないでしょうか。
その多くが貧困の苦しみから薬物に走ってしまうのであれば、その貧困状態から抜け出させてあげる、そして薬物中毒を治療で直していくといったプログラムが必要ですよね。
これじゃあお金をあげる代わりにその人に見切りをつけているようなものではないでしょうか?
お金は成績向上に関係ない?
近年、アメリカの多くの学校では、共通テストで好成績を収めた子供にお金を払うことによって、学業成績を上げようとしています。
しかしこのインセンティブプログラムがすべての学校で、生徒の成績を上げるとは限りません。
成績が向上した学校もあるそうですが、全く変わらない学校もあるそうです。
面白い一例として、マサチューセッツ州の荒れた学校の話があります。
試験で合格点を取った生徒に100ドルから500ドル(約11,000円〜約57,000円)を支払うインセンティブプログラムを行ったところ、生徒たちの成績の向上に成功したそうです。
この話の興味深いポイントは、成績向上にインセンティブの金額の多い少ないは関係なかったというところ。
では何が生徒たちの成績向上にひと役買ったのかというと、それはあるポスターでした。
このインセンティブプログラムの宣伝に使われたポスターに、有名なラッパーの写真を使ったそうです。その意図は「良い成績を取ること=クールなこと」と生徒たちに印象づけることでした。
この作戦は効果抜群で、生徒たちのクラスの出席率も上がり、成績も向上したのです。
私が通っていた高校にも「スカラシップ制度」という、その年の成績優秀者上位10名に報酬を与えるというインセンティブプログラムがありました。
でも私は他県から途中で転入してきたためその制度について全く知らず、終業式でいきなり名前を呼ばれたことで初めてその制度を知りました笑
このことからもわかるように、お金自体が勉強のやる気につながる、成績につながるとは限らないんですよね。
私が勉強頑張ってたのは、当時転入したてで友達があまりおらずかつ東京にめちゃくちゃ嫌悪感を抱いていたので、「東京人に負けたくねええええ」といった闘争心からでした笑
その後無事に仲の良い友達が増えると、その闘争心も消えて成績は下がりましたw
つまり何が言いたいかって言うと、やる気っていうのはお金(インセンティブ)はあまり関係なくて、何か強い理由がある方がやる気が出るし持続するんじゃないのかなあってこと!
このことは社会心理学でも検証されてますよね。
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おわりに
いかがでしたか?
「何でも買える」ことは便利なのかもしれませんが、それは時として大きな問題や課題を含んでいることがあります。
本書では他にも、
・医者の予約の転売
・ダフ行為のどこが悪い?
・取引可能な汚染許可証
・お金を払ってサイやセイウチを狩る
・買われる謝罪や結婚式の乾杯の挨拶
・血液を売りに出す
・自らの体を広告として売り出す
・命名権の売買について
など他にも、実際に市場で売買されている非市場的価値の例や、そのことについて私たちはどう考えていくべきかなど、たくさん載っています!
かなり読み応えがありますが、どれも考えさせられる話題ばかりなので、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
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