『約束のネバーランド』4巻【ネタバレ有】ノーマンが出荷！？決死をかけた脱獄スタート

「ノーマンが・・・出荷・・・？」

ママの言葉に呆然とする５人。ノーマンが手に持っていたロープも、寄越すように言われる。

レイは考える。シスターを排除し、自分を切り捨てエマの足を折った。全ては”ノーマンの出荷”に備えるため。ママが言ってた”事情”とはこのことだったのだ。


医務室で寝そべるエマに「僕らの真の計画はバレていない 計画は成功する」と冷静に語り掛けるノーマン。

エマは今はそんな事よりノーマンを殺させない方法を考えなければと焦る。エマの前では平静を装っていたノーマンだったが、内心では”生きたい”と強く渇望していた。

しかし自分が逃げればレイやエマが代わりに出荷されるかもしれない。そうでなくても一度誰かが逃げたら確実に警備は厳しくなるだろう。でも計画を諦めない。脱獄を必ず成功させてやる。

そう決意するノーマンに、明日の昼１人で逃げるよう伝えるレイ。正確には”逃げたフリ”だ。発信器を無効化させ逃げたフリをして、エマの足が治るまでハウスの敷地内で潜伏。そしてエマ達の決行日に一緒に逃げる算段だ。

出荷されるなんてまやかしだと言い切るレイ。それでもノーマンはイエスと答えない。自分が逃げたら２人が代わりに出荷されるかもしれない。そんなのは絶対に嫌だ。

「命はくれてやる　でもその他一つ譲る気はない　負けるつもりも一切ない」

これでいいんだと笑うノーマンを見て、嘆くレイ。そんな２人に”レイも足を折ればいいよ”と言うエマ。大怪我すればすぐに出荷されることはない。レイも笑いながら賛同する。

ノーマンはそんな２人の様子に拍子抜け。怪我をすれば必ずしも出荷されないとは限らないと主張するノーマンに、間髪入れずに”じゃあめっちゃ風邪を引く”と返すエマ。

「“みんな”の中にノーマンがいなきゃ私は嫌だ！！」

一緒に生きよう？とエマが声をかけると、ノーマンは泣きそうな顔を隠しやっと同意してくれたのだった。


明日、塀に上って逃げたフリをし、ついでに下見もして来ると言うノーマンは気になっていることがあった。それはレイがいつどうやって”秘密”を知ったか。

“最初から”と答えるレイ。幼児期健忘ー通常なら人は知らぬ間に赤ん坊の記憶を失くす。しかしごくまれにそれが起こらない人間もいる。レイは胎児の頃からの記憶が残っていたのだ。

耳に伝わる”母親”の子守歌や本部にいた鬼の姿、断片的ではあったが覚えていた。文字が読めるようになり、自分の記憶と眼前の現実との矛盾を把握。ここは孤児院ではないと気づいたレイは、６歳の誕生日にママに確かめたのだ。そしてママとの”取り引き”が始まったというわけだ。

本部と近接する５つのプラント(飼育場)、それがこのGF農園(グレイス＝フィールドハウス)の全貌。門は逃げ道にならないと言うレイ。

レイは発信器を無効化させる道具をノーマンに渡す。ロープは今ドンとギルダが作っているそうだ。


ーその夜、ママはノーマンの里親が決まったことを子どもたちに伝える。おめでとうとお祝いの言葉を伝える無垢な子どもたち。

夕飯後、寝室へと戻ったノーマンは引き出しの中に転がるペンを見つける。

11月3日 金曜日 13時8分ー

ノーマンは発信器を壊す道具とロープを持ち、塀へと走っていく。木に括り付けたロープを握りながら壁を走って上る。塀の上へと辿り着いたノーマンは辺りを見渡すがー


日が暮れ、外で遊んでいた子どもたちがハウスへ戻る中、ノーマンがいないことに気づくママ。

”ノーマンは戻らない、出荷なんてさせない。”エマがそう思った瞬間、森から誰かが歩いてくる姿を発見する。それはノーマンだったー


ーその夜、レイはどういうつもりだと問い詰めるも、逃げるつもりはないと返すノーマン。そして時間がないと言って下見の報告を始める。

塀の向こうは崖で飛び降りれる高さではない。プラントは塀を挟んで隣同士になっており、６つの区画がある。ここ第３プラントの真西の区画が恐らく本部。なぜならこの区画の先だけ橋があったからだ。

ノーマンは使ってないからと、発信器を壊す道具をレイに返す。使ってない、つまりノーマンは最初から戻るつもりだったのだ。

ノーマンは２人に嘘をついていた。自分が逃げたら計画が狂う、脱獄が難しくなる。それがわずかの可能性でもそれじゃ困る。

ノーマンは２人を抱きしめ、今までありがとうと言い残し部屋を去っていく。


ノーマンを見送る子どもたち。エマはノーマンを抱きしめる。

“ママの目を引きつける お願い逃げて”

そう耳打ちしたエマは発信器を壊す道具をノーマンの耳元へ、そして骨折している自分の足を床へ叩きつけようとする。

ノーマンはそんなエマを投げ飛ばし阻止。”無鉄砲にもほどがある！今きみがすべきことはこれじゃない！！”ノーマンは怒るもエマも引かない。

「死にに行く決意だけは尊重できない　「本当は嫌」なら尚更だ！」

真剣な眼差しのエマ。ノーマンはそんなエマに思いをはせる。無茶で無謀で甘くて幼稚で、けどまばゆいくらい真っすぐで。その気持ちだけでどれだけ僕が幸せだったかー

エマの頬に手を伸ばすノーマン。

「時間よノーマン」

ママはノーマンの頭に帽子を被せ、ノーマンも立ち上がる。子どもたちに見送られママと門へ向かうノーマン。

門へ辿り着くと内部の部屋で少し待っているようママが言う。部屋へと入るノーマン。

「え」

ノーマンが去り数日ー
誰が見ても分かるくらいにエマとレイは落ち込んでいた。

「もういい ここ(農園)で死のう」

周りは崖で橋も本部から出てる一つだけ、何より疲れたんだーレイはエマたちに告げる。

エマはベッドへ横たわる。頭も体も動かない。
そんなエマの元へママが訪れる。

絶望に苦しまずに済む一番の方法は諦めること。もしエマが望めばママ(飼育監)に推薦すると言う。それだけはできないと答えるエマに、せいぜいのたうち回って死を迎えなさいと吐き捨て去っていくママ。


エマは何も出来ずに時間だけが過ぎていったー


ー２か月後
2046年1月14日 日曜日 23時38分

眠れないエマが食堂を訪れると、そこにはレイの姿が。レイは明日が誕生日、今日がハウスで過ごす最後の夜だった。

レイはエマに尋ねる。

「本当は諦めてなんかないんだろ？エマ」

その言葉にエマは不敵な笑みを浮かべ・・・？

ノーマンが去ってから今日に至るまで、エマは何も出来なかったのではない。“何もしないこと”をあえてしていたのだ。

ママは必ず監視をしてくる。些細な態度や反応も見られている。それを気取られてはならない。ノーマンを犬死ににはさせない。

その考えはレイも同じ。２人は諦めたフリをして脱獄の準備を進めていたのだ。

ママは手強い。でも私に目を向けさせれば、”私以外”から目を逸らすことができる。そう考えたエマはこの２か月の間、ドンとギルダに訓練を始め諸々の準備を任せていた。

明日の昼にここから逃げようと提案するエマに、夜の方がいいと返すレイ。

脱走するにあたって問題は２つ。１つは”ママの目”。ママの監視を振り切って逃げるかつ、ママと幼いこどもたちを切り離さなければならない。

2つ目は”橋の警備”。見張りは必ず置いている。そうでなくても本部の先、化物がたくさんいることは目に見えていた。

普通は諦めるしかない状況ーだがレイはある策を提案する。夜、ハウスに火をつけることだ。

ママが消火に手間取っている間に「避難」という形で全員をハウスの外へ連れ出す。地下の連絡室へと続く鍵穴に粘土など埋めておけば、ママはすぐには通報できない。本部には「脱走」ではなく「火事」と思わせるのだ。

そうすればしばらくは警備の目が「橋」へは向かない。そして夜なら姿も隠しやすい。

「さあ 明日と言わず今夜 今 逃げよう」


食堂の床にオイルを撒き始めたレイにエマは尋ねる。”もしママが火を消すことを諦めて私たちから目を離さなかったらどうするのか？”レイは問題ないと答え、自分の頭から勢いよくオイルをかけ始める。

出荷が決まっているフルスコアが燃える。ママは絶対に捨て置けない。

「呪いたい人生だったけど お前らとの時間はすげぇ楽しかった」

エマに別れを告げたレイは火をつけたマッチを落とし、辺り一面が燃え広がっていくー



23:45
明日はいよいよレイの出荷。エマもレイも２か月の間何もしていない、あの子たちに打つ手はないー

ママはそれでも念のため、夜通し起きていようと考える。ランタンを持ち見廻りへと向かおうとした瞬間、エマの叫び声がハウス中に響く。

ママは急いで声のする食堂へと向かうと、跪くエマ、そして火の海を目の当たりにする。

火の中に向かって「レイ！」と叫ぶエマ。何かが燃える匂い、エマの動揺。ママは発信器のモニターをすぐさま確認すると、火の中に発信器の反応が。

“これは報復！！”

ママは一瞬で状況を察するも、明日に控えたフルスコアの出荷のため火を消すことを決意。１階へ降りてきたギルダに子どもたちの避難を託したママは、消火器を持って再び食堂へ。

火は強くなる一方でスプリンクラーも作動しない。呆然と立ち尽くすエマにも逃げるよう声をかけるママ。振り返るとそこにエマの姿はなかった。

「エマ？」

ママは発信器の反応を辿り、違う部屋へと入っていく。モニターを見るとすぐ目の前に反応がある。ママが目線を下げるとそこには転がったバケツが。バケツをどけるとそこには切り取られた”耳”が落ちていた。

ママは思い返す。エマもギルダも避難する子どもたちも、みんな”靴”を履いていた。緊急時にも関わらず、スリッパではなく外で履く靴をきちんと履いていたのだ。


エマは左耳を抑えながら森を駆けて行く。そこには子どもたちが待っていた。そしてその中にはレイの姿もあった。


ー20分前
エマはレイの落としたマッチを両手でキャッチ。エマはレイがこうすることを分かっていたと言う。実はノーマンがレイの計画に気づきエマにすべてを託していたのだ。状況が把握できず目を見開くレイ。

トーマとラニがやってきてレイに新しい服を渡す。そしてオイルが撒かれた床にブラウスやソーセージ、髪の毛の束などを並べる。人間が燃えたように見せかける為だ。最後に耳から発信器を取り出す。

「さぁ 始めようノーマン」

火のついたマッチを床に落とすエマ。炎が一気に燃え広がる。



“お前ら二人を死なせないためだよ！！”

レイが以前放った言葉から、レイは自身を”死なせない”数に入れてないことを察したノーマン。しかしレイの性格から大人しく出荷されるとは考えにくい。
ノーマンはレイのベッド付近を探っていると、床下から大量のオイルを発見する。一瞬で火事を起こすのだと理解。”自分を燃やして火事を起こし、ママを引きつけ自分たちを逃がす”それがレイの計画。

レイさえ死ななければこの作戦は使える。そう考えたノーマンは計画の詳細を書き出し、シスター・クローネから託された”ペン”とマスターキーの鍵の型と共に、エマへと手紙を残していたのだ。



ー待っていた子どもたちに発信器を壊したか聞くエマ。全員で森の中を走り塀を目指す。レイは驚いていた。ハウスの正体や脱走について全員知っている様子だからだ。

“自分たちが思ってるほどみんな子どもじゃない” ドンとギルダの一件でそう感じたエマは他の弟や妹たちにも真実を話すことを決意。まずはナットとアンナ、トーマとラニの４人。残りは２か月かけて少しずつ引き入れていたのだ。

塀へと辿り着いたエマたち一行。レイはそこであることに気づく。


その頃ママは笑っていた。

“エマもレイもまだ生きている！！”

生きてさえいれば捕まえられる。ママはエマたちを追う準備を整えていると、突如後ろから誰かに服を引っ張られる。

「ママ」

そこにはフィルの姿がー