『約束のネバーランド』5巻【ネタバレ有】「外」の世界で待ち受けていた脅威とは

ハウスを包み込むように燃え上がる炎。

ママはエマたちを追う準備をしていると、誰かに呼び止められる。後ろを振り返るとそこには逃げたと思っていた子供の内の１人、フィルの姿が。


ー約１か月前
５歳までは引き入れたドンとギルダ。次は４歳から下の子たちに真実を話さなければならない。ギルダはふいに心配になる。

まだ幼い子供たちに信じてもらえるか、そのまま隠し通せるか。そして連れ出した「外」の世界で生きていけるか。

“もう誰も出荷させたくない 家族全員連れていく”
そう言うエマに対し、他のプラントの子達は？と尋ねるギルダ。見たこともないけど自分達と同じように何も知らずに暮らす家族がいる。

“そうだよね・・・”

エマは４歳のフィルを呼び出す。そしてハウスとママについて真実を話すと、フィルはすんなり理解。最近のエマとママの様子や、シスターの言動などから薄々何かがおかしいことに気づいていたのだ。

今赤ちゃんまでの全員を連れていくか、４歳以下を置いていくか。２つの選択肢で迷っているとエマは言う。出荷されるのは満6歳から。かつ上が１５人抜けるとなると”質重視”のGFハウスなら必ず出荷ペースが落ちる。フィルを始めとする現４歳の子達は成績も悪くない。

どんなに短く見積もっても２年の時間はある。そんなエマの話に対し、”待てるから置いてって”と笑顔で返すフィル。

“２年以内に必ず戻り、フィル達と他４つのプラント全ての子供達を連れて出る”

それがエマの出した答えだった。


ーフィルは他の子達の元へママを誘導。ママは状況を把握、無線機にて脱走を報告すると全プラントに警報がけたたましく響く。

「特上以外は殺しても構わん　但し全て頭部は傷つけるな」

本部の鬼たちが追跡の準備を開始する。

塀の上を走る子ども達。橋まではまだ距離があると心配するレイに、エマは”ここから対岸に渡る”と言う。ママだって本部だって”逃げるなら橋から”だと思うはず。だからこそ橋へは行かず、崖から逃げるのだ。

ドンは落ち着いた手つきで、石を括り付けたロープを対岸の木に向かって投げる。木に結びついたロープ上を、両手で掴んだハンガーをスライドさせて渡って行くドン。次々と落ち着いた手つきで対岸へと渡って行く子供達を見てレイは驚愕する。

積み重ねた「準備」と「訓練」。この２か月子ども達は本気でそれをやってきたのだ。

レイは決意する。死ぬのはまだ先でいい。俺はこいつらと逃げる。「外」で生き延びてみせる・・・”やるからには勝つ！！”とー


本部の鬼たちは子ども達を見つけることができないでいた。不審に感じたママは気づく。エマたちは橋には来ないということに。

塀へと急ぐママ。上った先には木から伸びるロープが風に揺られていたー



約20年前ー

木に寄りかかり歌う少年。そんな少年、レスリーの元へ木から降りてくる少女、イザベラ。
イザベラはレスリーが歌う名も無き歌を気に入り、一緒に歌う２人。

イザベラはレスリーもハウスも大好きだった。

ある日、塀へと上るイザベラ。足元には底が見えない崖が広がっていた。下から”ママ”がイザベラを呼び戻す。


ー時は流れ、イザベラは”ママ”候補に。子供も妊娠し、お腹を撫でながら子守歌を歌うイザベラ。

第３プラントの飼育監を任されGF農園(グレイス＝フィールドハウス)へ。


後悔などない、自分で選んだ道だもの。世界は変わらない、私が死んで何になる？ならば私にできることを。誰よりも深い愛情を。一年でも長い命を。何も知らないこの子達に。今はもういないレスリーの分まで。

ある日、木に寄りかかりながら歌を口ずさむレイ。イザベラは気づく。その歌が”あの歌”であることに。

「ねえ・・・なぜ俺を産んだの？お母さん」


ー”私が生き残るためよ”
悔しくてたまらなかった、彼が殺されていたなんて。何もできない変えられない。だからこそせめて生き続けてやりたかった。”食べられない人間として！！”

「でも もう・・・いいか」

エマたちが逃げて誰もいなくなった崖の上。ママは小さく笑いながら呟く。

商品を守りきれなかった無能な飼育監。あの子達の成長を見抜けなかった、私の負け。みんなあんなに小さかったのに・・・ただ普通に愛せたらよかった。

“行ってらっしゃい 気をつけてね その先に光がありますように”

ママはロープを回収し、フィルたちの元へと戻るのであったー



エマたちは森を駆け抜けて行く。自由になれたことを嬉しく思う反面、敵だらけの世界で生きていかなければならないことに、思いを馳せるエマ。

それでもみんなと生きていく。フィルたちも必ず連れに戻る。今日がその第一歩目。

森を抜けると空には太陽が上り始めていた。

原生林の中を進むエマたち。絵や写真で見るよりずっと大きく高い木々が辺り一面に広がっていた。

夜通し移動していた子供達。眠気や疲れによって逃げるスピードが落ちてきたので、休憩を挟むことに。

みんなが朝ごはんを食べる中、”私がみんなを守るんだ！！”と気を張り続けるエマ。そんなエマに休むようにと声をかけるレイ。

レイはエマに謝る。自分が最初から協力的だったら、エマの手や耳を怪我させずに済んだかもしれない。エマはそんなレイに”レイが笑って生きててくれたらそれでいい”と返す。

レイは誓う。生きて家族全員を守る、そして何があってももう二度と切り捨てないと。


ーこれからどう動くか話す２人。エマは”ミネルヴァさんに会いに行く”と言って、ノーマンから託されたペンをレイに渡す。ペンをよく見ると”W・M”の文字が。

このペンは書くためのモノではない。レイが分解すると中には”B06-32”と文字が書かれていた。そしてもう一段階引っ張ると、レイの目の前に映像が映し出される。そこには”B01-14”という文字が。

“一体これは・・・”レイが考えを巡らせていると、トーマが叫ぶ声が。一緒に歩いていたラニが突然消えたと言うのだ。ラニの名前を呼んでも返事は返ってこない。

レイは気づく。”ラニだけじゃない、なぜ誰の反応もないんだ？”

みんなが朝ごはんを食べていた場所に戻ると、そこには誰の姿も見当たらない。

消えるはずない、どこかにいるはず。エマがそう考えた瞬間、突如 地面が動き真っ暗な地下へと落下。


目が慣れてきた頃、前方から現れる光と共に名前を呼ぶ声が聞こえる。そこには懐中電灯を持ったギルダ、そして他の子供たちの姿があった。

地下は木の根っこが一面に張り巡らされ、虫も植物も見たことない生き物だらけ。ハウスで得た知識や常識と差がありすぎて困惑するレイ。世界は今どうなっているのか。

外がこんなにも危険だと知れてよかったと考える一方、一刻も早くミネルヴァさんの元へ急ごうと決意するエマ。まずはここから出るのが先だ。

天井を見上げると、落ちてきたはずの場所は既に根っこで塞がれている。奥へと進んで行くと、そこにはお花畑と巨大な木の根っこの塊が。登って出れるか確かめてみると言うドン。そんなドンを横目に、ふと上を見上げたナットは悲鳴を上げる。

そこには干からびた動物たちが吊り下がっていた。

お花畑に夢中のアリシアとジェミマ。その背後では根っこが動き始め２人を襲おうとする。間一髪のところで２人を助けたエマ。気づくといつの間にか入口も封じられていた。

たくさんの根っこに囲まれ身動きが取れない子供達。レイは気づく。ここは恐らくこの木の餌場。この木は動物を捕らえて食べている。自分たちは罠にかかったのだ。

どうすれば・・・焦る子供達。エマはこの状況に見覚えがあった。ハウスにあったミネルヴァさんの本。その中でモールスの意味が分からなかった２冊の内の１つ、冒険小説の”ウーゴ冒険記”だ。

主人公”ウーゴ”が相棒のキツネザル”マーヴィン”と世界の秘境を旅する冒険の物語。その中の第３章「アルヴァピネラの蛇」のページを広げるエマ。


“海底洞窟アルヴァピネラは恐ろしい毒ヘビの巣窟　無数の蛇がまるで入り組んだ木の根のように 　まるで一つの生き物のように壁一面を埋め尽くしている

”足元の宝石の輝きが残酷なまでに美しい　蛇は宝を守っているのか　それとも宝は我々獲物をおびき寄せる餌なのか”


小説と今の状況は似ていた。”この冒険小説は外の世界のガイドブックだったんだ” と気づくエマ。レイは試してみようと言い、マグカップを根の先へめがけて投げる。すると根がマグカップめがけて振り下ろされ、マグカップは粉々に。

「やっぱり”接触”だ」

根の先に触れると位置を把握し攻撃する。みんなに説明するレイとエマ。

木を登って上を目指す子供達。アルヴァピネラの蛇は全て洞窟の天井の岩から生まれ増えていった。この木も同じ。増え続ける壁の根は全て天井から伸びてきている。上まで逃げて下が壁の根で埋め尽くされるほどになれば、天井の根はどんどん薄くなっていく。

エマたちは緩んだ天井の根にぶら下がり、重みで根を引っこ抜いていく。

“アルヴァピネラの蛇から逃げるには洞窟の天井に穴をあければいい　外は凍てつく北の海　蛇は寒さで眠ってしまう”(ウーゴ冒険記)

天井から冷たい風が入ってくると、根はその動きを止める。エマたちは無事に地下から脱出するのであった。

地下から無事に脱出した子供達。

レイは早速ウーゴの小説に出てくる植物を発見する。真水を貯め込むイソギンチャクだ。ナイフで切れ目を入れると水が溢れだす。水を確保するために一々、川を捜さなくていいのだ。

未知の環境で何より一番大事なのは「食べ物と水」。外の世界の手引書であるウーゴ冒険記からは、”何が食べれて何が毒なのか”の情報も載っていた。

“生き抜く、まずはこの森を抜ける”

森を進んで行く子供達。ドンがエマに方角が合っているか尋ねると、エマはペンを取り出し分解する。するとエマの前に”B 00-15”という文字列が映し出される。

レイは気づく。この文字列は現在地を表しているのだ。

左の数字が南北、右の数字が東西への距離。エマがハウスで見た時は、アルファベットなしで”00-00”と映し出されたと言う。つまり起点はハウス。そして向かうは”B06-32”地点だ。

レイはエマにこれがどうやって位置だと分かったのかを尋ねると、エマはレイにペンを差し出す。ノーマンからの手紙に「ペンを見れば分かる」と書いてあったと言うエマ。

分からなければ「レイに見せればわかる」と続けて書いてあった手紙。レイは映し出された映像の文字列の下に、蔵書票と同じモールス符号があることに気づく。

“touch me(私に触れよ)”

レイが映像に手をかざすと、”13-18-02”という数字列の下に空欄が表れる。レイは気づく。図書室から持ち出したモールスのない本、あれはこのペンの”コードブック”だったのだ。

”13-18-02”は暗号で、答えを入れると次に進む。レイはコードブックの13ページ18行2単語目に記載されている”HUMAN(人間)”の文字を入力。すると映像が切り替わる。

“助けが要るなら訪ねておいで　B06-32地点に私はいる　ウィリアム・ミネルヴァ”

ミネルヴァからのメッセージだ。次の暗号に対する答えを入力しようするレイ。その瞬間、２人は何かの気配を感じ取った。

何かがもの凄い勢いで走ってくる音。子供達が後ろを振り返ると、そこには口を大きく開けながら走ってくる巨大な怪物がいた。


走って逃げる子供達。レイは恐らくあれは”鬼”だと言う。

あの手、あの顔、あの皮膚、見覚えがあるエマ。でもノーマンと見たのは人型で言葉も喋っていた。色んな種類がいるのか？鬼ってどんな生き物？エマは走りながら思考を巡らす。

恐らく追手ではない。追手なら自分たち商品を食べようとしない。この鬼に捕まれば問答無用で食べられるのみ。

“食われてたまるか”

ドンは後ろに走るギルダや他の子供達に手で合図をおくる。二手に分かれるドンとギルダ。そしてそれぞれに迷わずついていく子供達。鬼はドンが率いる方へついていく。ギルダは運動が苦手な数人をいち早く離脱させる。

焦らず敵や地形を見て、的確に動く子供達。驚くも感心するエマとレイ。みんなは大丈夫だと判断し、２人で追ってくる鬼を倒すことに。

自分たちも先ほどかかった木の根の罠に落とすと言うレイ。1人でやると言うレイにエマは反対するも、”犠牲になろうとはしてない、自分にできるから自分1人でいいんだ”と返すレイ。

自分が鬼の前に出て行って、10秒経ったらギルダ達と合流して風下へ走るよう指示するレイ。２人は別れ、レイは鬼の前に姿を表す。そのまま木の根まで自分を追わせて誘導していく。

あと少しというところで、突如 鬼の首が跳ね飛ばされる。

レイが驚き振り返ると、そこには追手の鬼の姿がー


咄嗟に木の裏に隠れるレイ。エマ達は無事なのか、どうやって逃げるか考えていると、追手の鬼は出ておいでとレイに声をかける。

手下の鬼たちは殺した野生の鬼を確認。口から人間の匂いがしないから誰も食われていないと報告しているようだ。他の子はどうした？君1人か？と尋ねてくる鬼にレイは確信する。

“エマ達は無事だ！！まだ見つかっていない！！”

追手たちはエマ達が生きているのかどこにいるのか、何も掴めていない。ならば奴らの注意を全て自分に引きつけ、とにかく自分を追わせる。今狙われたらエマ達は終わりだ。

逆方向へ逃げて出来る限り引き離すことを決めたレイ。木の裏に「GO 06-32 PURSUER(追っ手)」の文字を刻んで残し、追手の前に姿を表す。


一方、エマ達はレイの戻りが遅いことを心配していた。”もしかして追手？”嫌な想像が脳裏に浮かび、顔が真っ青になるエマ。様子を見に行こうと走り出すが、フラつきそのまま倒れてしまう。

駆け寄るギルダとアンナ。エマを確認すると耳の傷が開いており、体も熱い。

“どうしよう エマもレイもこんな・・・”

「こっち　こっちよ」

不安になる子供達の前に、突如”謎の少女”が表れー