『約束のネバーランド』6巻【ネタバレ有】この世界に人間はいない？交わされた昔の"約束"とは

「こっち　こっちよ　ついてきて」

この謎の少女は味方なのか？こんな危険な森にこんな女の子一人？しかも追手が現れたのならそれと同じタイミングで。

何者なのか、どうしてこんな所にいるのかを少女に問うギルダ。

一方、追手に追われ森を全速力で走るレイ。鬼はどんどん増えていく。

鬼は自分が疲れるのを待っている。止まったら負け、その時点で捕まる。頭を使い追手を撒きながら走っていくレイ。しかし追手も知性を持った鬼。抜け道を何度つくってもすぐに封じられてしまう。

“負けてたまるか、止まってたまるか、諦めてたまるか、死んでたまるか”

気づくとレイは鬼たちに囲まれていた。レイは逃げるため一歩踏み出すも疲労は限界、足から崩れ落ちてしまう。”諦めろ”と言いながら鬼が近づいてくる。

“絶対に嫌だ！！”

その瞬間、馬のような生き物に乗った男が現れ、レイを拾い上げる。

「乗れ！！」

レイは驚くも瞬時に男の体に抱きつきそのまま馬に乗る。男が丸い何かを背後に落とすと、辺りに煙が広がる。やっと煙が消えて周りを確認する追手の鬼たち。そこに男とレイの姿はなかった。


ー今どこを走ってるのか？いやその前にこいつは何者なのか？なぜ自分を助けた？まさかミネルヴァ・・・？レイは考えるもそのまま気を失ってしまう。


気づくとレイはどこかに寝かされていた。周りを見渡すと洞窟のようだ。

今何時だ、昼か？夜か？とにかくまずは現状の把握をしなければならない。レイは枕元にあった灯りを手に持ち、洞窟を進み始めるとすぐ何かにつまづく。

足元を見ると、そこにはエマが寝かされていた。エマはレイの声で起きると、レイが無事に戻ってきたことに安堵の表情を浮かべる。

ここはどこなんだろう？みんなは？と尋ねるエマ。どうやらエマも知らないようだ。気を失う前までの情報を共有する２人。それぞれ違う場所で頭巾の男と頭巾の少女に助けられた。

敵なのか味方なのか。”ミネルヴァさんだったりしないかな？”そんな話をしていると奥から誰かが歩いてくる。頭巾の少女だ。

「よかった！目を覚ましたのね　気分はどう？」

エマの手を取り話しかける少女。みんなも無事とのことだ。丁度食事の支度ができたと言ってみんなの元へエマたちを案内する少女。

頭巾の男も仲間なのか？レイが尋ねると男の名は”ソンジュ”と言って、彼も向こうにいると少女は返す。他にも聞きたいことは山ほどある。世界について、鬼について、自分たち以外の人間について。

“俺達は今会えたんだ 「外」でその人間に！！”

レイは少女に話しかけようとするが、あることに気づく。

少し間を置きレイは少女に助けてくれたことについて礼を述べる。そして一つ聞きたいことがあると続けるレイ。

「なぜ俺達を助けた？なぁ なぜ鬼が食料(にんげん)を助けたんだ？」

視線を下げる２人。服の裾から覗く少女の足。それはどう見ても人間の足ではない。エマたちの背後からはもう１人の鬼”ソンジュ”も近づいてくる。

なぜ助けた？食べるつもり？みんなは？食事の支度ってまさかー　
最悪な想像が頭をよぎるエマ。


「おいムジカ行きすぎだ また道間違えたろ」

迎えに来てくれたの？と聞き返す少女”ムジカ”は「でもタイミングが最悪よ」と続ける。２人が会話を続ける中、それを遮って全員無事なのかを問うエマ。返事を聞く間もなく奥へと走り出す。

お願い無事でいてー
奥に灯りが見える。エマは走ってそこまで行くと、そこにはみんなの姿が。

その後ろからムジカとソンジュが現れる。怖がらせてしまったことを謝り、自分たちは人間を食べないから危害を加えるつもりもないと言う。


鍋を囲んで食事をとる子供達、そしてムジカとソンジュ。子供達はすっかり２人になついていた。

夜中、子供達が寝静まった頃、エマとレイはソンジュの元を訪ねる。休める内に休んでおいた方がいいと言うソンジュに、ありがとうと返すエマ。そして疑ってしまったことを謝る。

ソンジュとムジカは宗教上の理由、信仰のために人間を食べないと決めているそうだ。そしてエマたちを助けたのは単純な興味、こうして久々に人間と話がしてみたかったからだと話すソンジュ。

“生きた人間なんて農園でしかお目にかかれない”そう語るソンジュに、世界は今どうなっているのかエマは問う。

「30年前 人間に何があったの？世界はどうなっているの？」

そんなエマの問いに、”何も起きてない　世界はずっと昔からこのままだ”と答えるソンジュ。

ここは地球じゃないのか？暦(こよみ)が嘘なのか？今は2046年でない？そう問うレイに、ここは地球で今は紛れもなく2046年であることをソンジュは告げる。

そして昔話を始めたソンジュ。


ーかつて世界は広かった。まだ農園も存在せず、鬼はあまたいる人間を狩って暮らしていた。鬼を恐れ伏する人間もいれば、憎み逆に狩り殺す人間もいた。

人間はやがて食われるより多くの鬼を殺し、鬼もまた人間を憎むようになる。終わらない殺し合い、果てのない恐怖。互いに嫌気が差した頃、人間側からある提案が持ち出される。

“人間は鬼を狩らない　だから鬼も人間を狩らない　お互い世界を棲み分けよう”

この約束によって世界は二つに切り分けられ、二つの世界は断絶したー


ここはその時分かれた”鬼側の世界”。そもそも人間の世界ではなかったのだ。

そして食用児の祖先は、その時こちらの世界に置いて行かれた土産。鬼は”人間を狩らない”その約束を守り、人間を管理・養殖し続けている。その養殖機関が”農園”。GF(グレイス・フィールド)は、”多種多数ある”農園の最上位(トップ)だったのだ。

“人間の世界じゃない”　真実を知ったエマとレイは驚きの表情でお互い目を合わせる。

「やったぁ！！よかったぁ！！」

ソンジュの予想に反して大喜びする２人。

最悪だけど思ってたよりずっとよかった。人間の世界が別にある、鬼がいない世界が他にある。喜ぶ２人を目の前にしてソンジュは言いづらそうに、人間の世界へは渡れないことを伝える。

道は完全に閉ざされている。”二度と行き来できない”と約束で定められていた。しかし”人間の世界へ行く方法を見つけるから大丈夫”と返す２人。

ハウスにあった本やおもちゃ、服、食器、家具、機械・・・あれは鬼が作ったものではない。万一そうならなぜ旧型の中古品ばかり送られてきた？なぜミネルヴァさんのメッセージが、本が混ざる？

あれは人間が人間の世界でつくったもの。そして何よりミネルヴァさんこそが閉ざされた二世界を行き来している張本人。そう結論づいた２人は、みんなで鬼の世界から脱獄することを決意する。


ー追手の鬼たちはエマたちを捜すも見つけられずにいた。その地下を進むエマたち一行。
老いて死んだ吸血樹の地下道をソンジュが繋げてつくった道だという。出入口はソンジュとムジカの２人しか知らない。

道を進みながらエマはみんなに、ソンジュに教えてもらったこの世界の真実について話す。


「ミネルヴァさんに会って二つの世界を渡る方法を聞く　そして２年以内に準備・態勢を整えフィル達を連れに戻り　人間の世界へ行く」

そのためにまずは”B06-32”地点へ向かうー
すんなり行くとは思っていない。でも希望に形が見えてきたとエマは言う。


話がひと段落ついたところで、エマもレイもみんなに詰められる。エマが無理をして倒れたこと、レイが一人で追手の囮になったことをみんなは心配していたのだ。

「お願いだから自分を大切にして」

“自分たちのことを大切に思ってくれるのは嬉しいけど、エマ達だって同じように大切な家族なのよ？” そう言ってエマの手を握るギルダ。

ギルダを抱きしめ謝り、そしてお礼を言うエマ。そんな子供達を横目に「いい子達ね」と微笑むムジカはソンジュに問う。

「どうして全てを教えてあげないの？」

子供達が”約束”を破るなら〇〇を敵に回すことになるー
そう続けるムジカに、”〇〇はとうに食用児の敵だ”と返すソンジュ。



ー３日後
エマたちはソンジュらに案内されながら、洞窟内をだいぶ進んでいた。

あと５日もあれば森を抜けられる。その後１日歩けば目的地であるB06-32地点に到着する。その間、「外」を生き抜く最低限の知識、そして技術を教えてくれると言うソンジュとムジカ。

薬草の見分け方や料理の仕方、そして武器の使い方をそれぞれ学んでいく子供達。

エマは外に様子を見に行くと言うソンジュに自分も連れて行ってほしいと頼む。エマには目的があった。それは”生き物の殺し方”を学ぶこと。この先は自分達の手で捕って食べられるようにしなくてはならないのだ。

エマはソンジュに教えてもらいながら、弓矢で鳥を打ち落とす。ソンジュは獲物の胸に刺せと植物を渡してくる。エマには見覚えがあった。それはコニ―の胸に刺されていた植物だった。

“ヴィダ”という吸血植物。これを刺し儀程”(グプナ)”を行う。神に糧を捧げ神が受け取ったら花が開く。そうしたらその肉を食べることができる。それが鬼の伝統的な肉の屠り方(ほふりかた)、儀程だと言うソンジュ。

血抜きも兼ねていて生きてる内に刺さなければならない。コニ―や今まで何も知らずに出荷されていった家族たち、そしてノーマンを思い出し表情を歪めるエマ。

鳥は気絶していて苦痛はない。そして儀程は神への感謝。敬意なしには成立しない。

「安心しろ　お前の兄弟達もきっと苦しい思いはしていないよ」

そのソンジュの言葉に決心したエマ。命に感謝しヴィダを鳥の胸へ刺すのだったー

洞窟を歩いて５日、やっと森の出口付近に辿り着いたエマたち。一晩休んで次の日の朝、地上へ出ることに。

夕飯をとる子供達。その横で考え込むギルダは”計画のズレ”について心配していた。人間の世界が別にあるのは希望だが、鬼側の世界に人間の社会がないとなると計画は難しくなる。

人間の集落に紛れることができない。そしてフィル達を迎えに戻るにも人員が必要だ。

ソンジュによるとエマ達のような脱走者は他にいない。農園と言ってもGF(グレイス＝フィールド)のような高級農園はごくわずか。ほとんどが”量産農園”だと言うソンジュ。

“安価量産型の農園、劣悪な環境でただ生かし太らせ出荷する”

言葉も解さなければ名前もない。意志もないからそもそも”逃げよう”なんて考えもしない。

そんな量産農園が数百とある中、高級農園はGFを入れてわずか４つ。他の脱走者の存在は無いに等しい。それが現実であった。


ー考え込むエマを心配して話しかけるムジカ。エマはめげてなんかいられないと笑ってみせ、ムジカに家族たちの写真を見せる。

写真を見ながらたくさんお喋りして楽しい時間を過ごす２人。ムジカはエマ達と会うことができて、友達になれてよかったと告げる。それはエマも同じ気持ちであった。


ー次の日
地下から地上に出る子供達。少し歩くとそこには広大な荒野が。この先、南へ下って行けばB06-32へと辿り着く。

エマたちはここまで案内してくれたソンジュとムジカにお礼を告げる。別れ際、エマの手を握り何かを持たせるムジカ。”お守り”だと言う。

「”七つの壁”を探しなさい　あなた達の目指す未来はその先にある」

エマたちと別れた後、ムジカに”えらく情が移ったな”と言うソンジュ。

ムジカは森の中でエマたちを見つけた当初、実は農園へ突き出そうと考えていた。子供達を助けると決めたのはソンジュだったのだ。

“好奇心”で助けたなんて嘘。本当はなんであの子達を助けたのか？ムジカは問う。


人間でなければ”約束”は壊せない。あいつらならあの忌々しい約束を壊すことができるかもしれない。そうすればまた人間を狩れる日が来るかもしれない。

「原初信仰」の教義上、”神が作り出した命”をいただくのなら神への反逆には当たらない。””天然物の人間”なら食べると言うソンジュ。

「もう一度食いてぇなぁ　腹一杯人間をよ」

そう呟き不気味に笑うソンジュは,、”邪魔者”を消してくると言い残し森へと消えていく。


荒野を進んで行くエマたち。日もだいぶ暮れ、ペンで現在地を確かめるエマ。映し出された映像には”B06-32”の文字が。

今自分たちがいる場所がB06-32地点であった。しかし周りを見渡せど何もなく、荒野が永遠と続いていた。


「脱走者は見つかったか？」

農園の追手たちの前に姿を現すソンジュ。槍を使い容赦なく鬼を始末していく。



一方、B06-32に着いた子供達は周りを確認するもやはり何もない。

レイは言う。ミネルヴァが二つの世界を行き来している本人なら、いつも鬼の世界にいるとは限らない。そして、いくら鬼の危険が少ないこの荒野でも、分かりやすい目印を立てるわけにはいかない。

昨日の夜、ペンの情報の続きを見たと言うレイ。しかし何も見れなかったと続ける。正しい情報を入れたのに次の情報に進めなかった。恐らく、指定されたある地点まで移動しないと次の情報は見られない。

それがここ、”B06-32”地点だった。

レイはペンをズラし映像を映し出すと、”108-15-01”という数字列の下に空欄が表れる。コードブック108ページ15行の１単語目、”HISTORY(歴史)”の文字を入力すると、何かの地図が映し出される。

「地下への入口がある！！」

地図の情報を元に地下への入口を探す子供達。すると大きな機械音と共に、地面から地下へと続く扉が表れる。

ハシゴを下り地下へと下りたエマたち。そこにはたくさんの部屋が並んでいた。どうやら人間用の地下シェルターのようだ。

奥へと進んで行くと近くの部屋から物音が。ノックをして恐る恐る扉を開けるエマ。

そこにはたくさんのモニター、そしてイスに座り片手にカップを持つ男性の姿が。

「長旅ご苦労　ようこそB06-32シェルターへ」

この人がウィリアム・ミネルヴァなのかー