『約束のネバーランド』7巻【ネタバレ有】B06-32の男は誰？壁に書かれた"密猟者"の意味とは

B06-32シェルターへと辿り着いた子供達。物音がした扉を開けるとそこには男の姿が。

エマは男にミネルヴァなのか尋ねるも、違うらしい。ここにミネルヴァはいないと言う男。

レイは男に何者なのかを問うと、”先輩だよ”と返しエマたちが持ってるペンと同じペンを取り出す。そして服を捲ると、お腹に刻印されたナンバーが。

男は13年前に”グローリー＝ベル”という農園から仲間と一緒に逃げてきたと言う。しかしいくら待ってもミネルヴァは現れない。でもこのシェルターには感謝していると言う男。

水や食料、電気、居住スペース、そして世界についての情報や資料なども全て揃っているらしい。

他の仲間たちはどこなのか尋ねるエマに対し、全員死んだと返す男。予想外の返答に言葉が詰まるエマたちに、男はお前たちこそ何者かと聞く。

“GF(グレイス＝フィールド)出身で７日前逃げて出た１５人”

説明しようとする子供達の言葉を遮り、見れば解るし既に知っていると言う男。

「要はな　なぜお前らみたいなド素人のザコが15人全員　一人も死なずに”生き残っちまって”いるのかってことだ」

ここはシェルター、水も食器も部屋も全部揃っている。しかし限りがある。そしてエマたちは弱いからどうせ死ぬと吐き捨てる男。”あんたのかつての仲間のようにか？”と問うレイ。

男はそうだと返す。13年間で学んだこと、それはムダを省くこと。仲間も希望も情けも全てがムダだと言う男にエマは反抗するが、一瞬で捕まってしまう。

エマのこめかみに銃を突きつける男は、ペンを置いて出て行くかここで死ねと言い放つ。


外は野ざらしの荒野。寒さは？追手は？どこへ行く？当てもなく。
一瞬で考えを巡らすレイ。緊迫した空気が両者の間に流れる。

唐突に左手を振りかざしたエマ。そのまま拳を振り落とし、見事に男の金的へ打撃を喰らわす。男が痛みで悶えている隙に、部屋から出ようと試みる子供達。

何てことするんだと怒るレイとギルダに、”でも撃たなかった”と返すエマ。

「殺すなんてハッタリ　追い出したいだけなんでしょう？」

次の瞬間、エマの頬を銃弾が掠める。ハッタリじゃねぇよと言う男に対し、”ほら外した”と返すエマ。

次は当てると銃を構える男に、エマは自分達は出て行かないしペンも渡さないと断言する。

「それに私の家族は”ムダ”じゃない！！仲間も希望も情けもムダじゃない！！全部ムダになんかしない！！」

男を睨みつける子供達。すると突如足が震えだし頭を抑える男。昔の光景が頭に浮かび、ぶつぶつと何かを言っているようだ。

「マズイ・・・”奴ら”だ・・・」

その言葉を最後に男は気を失う。怪訝に思いつつもその隙にシェルターの中を調べ始める子供達。


廊下で立ちすくむイベットに声をかけるアンナ。この部屋って誰の部屋だろう？イベットの言葉にアンナが視線を上げると、そこには壁いっぱいに書かれた”HELP”の文字。その上には大きく書かれた”Poachers(密猟者)”の文字がー

翌朝ー
意識が戻った男は、自分がテーブルにグルグル巻きにされて固定されてることに気が付く。

他の部屋では久しぶりに布団で寝れて、感動する子供達の姿が。そのままお風呂へと直行する子供達。温かいお湯に幸せを感じていた。

食事をとりながらシェルターの機能に感心するレイ。風呂にトイレにキッチン、そして畑までも完備されている。水は地下水を引いて確保。有機廃棄物を使って発電。使いすぎなければ水と電気には困らず、ゴミも極力出ない仕組みだ。

「ここで暮らせる　この場所で」

エマとレイは確信する。

まずは5歳以上、連れ出た15人。安全な場所に生活できる場所に、誰一人死なせず辿り着くことができた。この幸せをフィル達も一緒に、家族全員で人間の世界でー

当面の生活拠点は手に入れた。次はフィルたちの救出、そして人間の世界へどう逃げるのかを考えなければならない。

資料室にあった資料や本を確認したエマとレイは、みんなに説明を始める。

まず各農園の大別と大まかな場所。GF(グレイス＝フィールド)は首に数字、GB(グローリー＝ベル)は腹に文字列など、農園ごとに管理マークが違っていた。昨日、男にすぐ身バレしてしまったのは、管理マークによるものだったのだ。

番号で個体を識別できるのは高級農園４つのみ。量産農園は”図案”だ。決まった紋章が決まった位置に刻印されている。

資料室には他にも”約束”のことや”人間世界”のこと、”鬼の集落の位置”などについてもあった。”鬼について”書いてありそうな本もあったがどれも古く、特に”約束”や”鬼”について触れている本は古文書レベルであった。

古い情報しか手に入らないのか、子供達が落胆する中、ドンはあることに気づく。

昨日、男は自分達の人数や脱走した日付も知っていた。つまり外の様子をリアルタイムで知る方法が他にある。恐らく男がいた部屋にあったモニターだ。

“世界を渡る方法”については？と聞くアンナに、今のところ何も見つかっていないと返すエマ。しかしミネルヴァについて分かったことが一つ。レイは古文書に挟んであったと言い、ギルダに手紙を渡す。

そこにはシェルター到着を祝う旨、そしてこの先、安住の地を目指すのならペンを持って”A08-63”へ行くよう書かれていた。

エマとレイは、２人でそこへ行ってみようと思ってることをみんなに告げる。

このシェルターは安全だ。鬼にバレた形跡もなく13年も男が住み続けている。しかし男の仲間は全滅している。”奴ら” “密猟者”、原因は恐らく「外」にあった。

全員で生き残るために今回は全員で動くべきではない。でもエマもレイも死ぬつもりはない。

「経験者である”先輩”の力を借りる」

次の瞬間、食堂の扉が勢いよく開けられる。そこには男の姿があった。


「おはようオジサン　取り引きしよう」

“オジサン”に話しかけ、自己紹介を始めるエマ。オジサンにも名前を聞くと名乗るつもりも必要もないと吐き捨てられる。

朝つくったスープを渡すエマ。このスープは持ってきた材料で作っていた。この先も自分たちの食料は自分たちでどうにかする。部屋や水、電気も最小限にしか使わない。

そう言うエマに、シェルターを共用することを却下すると言い放つオジサン。そんなオジサンにエマは単刀直入に告げる。

「ミネルヴァさんに会いに行く。そのガイド兼用心棒をオジサンに頼みたい」

13年間独りで生きてきたオジサン。すり減った靴、しまりきった腹、そして食料を外に採りに行ってる形跡。オジサンは”強い”と見越していたエマとレイ。

そして”手紙”を開けた形跡。恐らくオジサンは仲間たちと”A08-63”に向かったことがある。

ミネルヴァに会って無事に戻ってこられたら、全員このシェルターからすぐに出て行くと断言するエマ。

”出て行ってほしいんでしょ？”とオジサンに尋ねるも、この場で殺した方が早いと言い、ナイフをエマに向けるオジサン。レイは銃を向けるも、弾を抜いてオジサンの足元へスライドさせる。

質にとるのはオジサンの命ではなかった。昨日、資料室の奥で見つけたスイッチ。レイが徹夜して配線を直した”緊急破壊装置”だ。

「さ オジサン取り引きしよう　さもなくばこのシェルターこわしちゃうよ？」

笑顔で脅すエマに焦るオジサン。色々考えた末に、手を貸すことを約束するのであった。



出発は４日後、エマたちは資料室にある本や資料を片っ端から頭に入れていく。

ギルダは心配していた。旅の道中、隙を見てエマたちを殺しにかかる可能性だってある。レイは、オジサンがそう考えるのは当たり前だと言う。これから互いに肚(はら)の中を探り合いながら、この状況を利用し合う。この旅はそういう旅なのだ。


出発まであと１日。オジサンは例の”Poacher(密猟者)”と書かれた部屋にいた。密猟者って何なのか、A08-63には着いたのか、どうして仲間が全滅してしまったのか、エマは尋ねるも、言いたくないと拒否するオジサン。

エマ達はいい家族だから嫌いで目障りで気持ち悪い。今すぐ消えてほしいと言う。

一つの判断で全てが狂う。自分の理想が判断が仲間を殺す恐怖が。「全員で生きる人間の世界で」その判断は正しいか？「ムダじゃない全部ムダにしない」？

「楽しみだね　この旅の先になお同じことが言えるかな」

オジサンはそう言うとエマたちを食堂へと連れていく。

壁際にあるピアノ。オジサンが蓋を開けて少し中を弄ると隠し部屋への入口が現れる。エマとレイが入るとそこは武器庫、たくさんの銃が部屋いっぱいに並んでいた。

銃に刃物、盾に爆弾。武器庫には何でも揃っていたが、どうしてこんな部屋があるのか、ミネルヴァの意図は分からないでいた。

この先進むのは敵地。完全に”鬼”の生活圏だ。何かあってもエマ達を助けないと言うオジサン。エマとレイは慎重に持って行く武器を選ぶ。

“生き延びるには逃げることだ”

ソンジュの言葉を思い出す２人。重すぎて逃げ足が鈍るような武器は避けたいところだ。

エマはナイフを選ぶ。基本はソンジュに貰った弓と矢を使い、新しい矢をつくったり獲物を捌いたりするのにナイフを使うのだ。

しかし弓矢とナイフだけでは鬼に対抗できない。レイは銃を２人で１つ持って行くことを提案。そしてもう１つ、銃口が４つあるピストルも手に取り、モノによっては使えると言うレイ。エマは銃口をよく見るとある事に気づく。


ー出発当日
エマ、レイ、そしてオジサンの３人は装備を身に着け準備万端。

ギルダはオジサンを呼び止め、二人を無事に返すよう伝える。もし”何か”あって途中で引き返すことになっても、どちらか一人は必ず生きて返すよう再度念を押す。

「お願い」であればわざわざ聞く謂れはないと返すオジサンに、”自分の心積もりだ”と言うギルダ。

「エマもレイもどちらも生きて戻らなかったら　次は私がシェルターを壊します」



シェルターを出発した３人。

序盤から全速力で走るオジサンに必死でついていくエマとレイ。進める場所はさっさと進む。荒野をさっさと抜けるぞと言うオジサン。

まずは荒野を東へまっすぐ抜ける。ミネルヴァ探し、A08-63はそこからが本番だ。エマたちは出発前、資料室にあった地図で位置を確認していた。A08-63の辺りに記載された地名は”ゴールディ・ポンド”。

ここに何があるのか、ミネルヴァはいるのかいないのか。分からないけどきっと何かはある。行って確かめる価値はあった。


一生懸命後ろをついてくる２人。それなりに地獄を見せて片方死んだとこくらいで助ける。どっちか片方には死んでもらおうと目論むオジサン。

そんなオジサンの思惑をエマもレイも分かっていた。恐らく両方でなくどちらかを殺しに走るはず。そして”殺す”というよりは”見殺し”にする可能性が高い。”本当は悪い人じゃないと思う”と言うエマ。

しかし元が善人だろうが関係ない、エマも弟妹も殺させない。いざとなったら自分がオッサンを殺すと考えるレイ。


荒野を抜け森に入った３人。ここからA-08-63”ゴールディ・ポンド”まで比較的安全な道もあるが、３週間もかかってしまらしい。違う道を進み、僅か４日で到達を目指すと言うオジサン。

まずはこの森。野良の”人喰い”の群棲地。

群れを成し常に集団で動く。おまけにどの種も気性が激しい。つまり見つかれば”死”が待っている。

絶対に見つかってはいけない、寄せつけてはいけない。日暮れまでにここを抜ければ夜は縄張りの外で眠れると言うオジサン。


ここまで順調に進んできた３人。エマとレイは常にオジサンを観察、そして分析してそこから動きなどを学んでいた。

恐らくエマが「方針」でレイが「知恵」。本質的に誰より面倒なのはエマで、基本裏で手を引いてるのがレイ。どちらを死なせたらより黙るか、そして何より順調に進んでいることがつまらないオジサン。


エマは急に何かを感じ取る。ふと上を見上げるレイ。そこには口を大きく開けて飛び掛かってくる鬼の姿が。

瞬時にエマを引き寄せるレイ。勢いよく転んだせいでレイはすぐに立ち上がれないでいた。エマは銃を持ち振り返るが動けない。その瞬間、鬼に弾丸を何発も打ち込むオジサン。

放心状態のエマに声をかけるレイ。エマは自分が生きてるかレイに尋ねる。

「死んだと思ったろ」

実際死んでた、お前は引き金を引くことすらできなかったと指摘するオジサン。エマは助けてくれたことにお礼を述べるも、助けてなんかいないと返すオジサン。

「すぐに”再生”して仲間を呼ぶよ」

エマとレイが後ろを振り返ると、そこには体の修復が始まっている鬼の姿が。つんざく様な声で叫び仲間を呼ぶ鬼。

オジサンはわざと殺さずに、あえて２人に黙っていたのだ。


木の上に避難する３人。下を覗くとそこには既に多数の鬼が集まっていた。

食事を邪魔され同胞を攻撃されて怒り狂っている鬼たち。

「さぁ　ガキ共 生きてみろよ」