『約束のネバーランド』8巻【ネタバレ有】A08-63"ゴールディ・ポンドは秘密の〇〇だった

「片方死んだら助けてやるよ」

そう言ってどこかへ去ってしまうオジサン。

木の上に取り残されたエマとレイ。下には野生の鬼がウジャウジャしている。鬼が木の上へ登ってくると、２人は枝の上を走り逃げていく。

銃を構えるレイ。追ってくる鬼の頭上にある木へ向かって発砲し。鬼の上に木が落下する。すかさずエマが四つ口のピストルを構える。弾丸は”緑”。エマが引き金を引くと、鬼たちの上に捕縛ネットが発射された。

四つ口のピストルはそれぞれ”閃光、催涙、捕縛ネット、そして音を発する機能を持っていた。しかし所詮、時間稼ぎ。走るエマが後ろを振り返り確認すると、仲間を食べてネットの中の隙間をつくる鬼たち。

鬼たちはすぐさま捕縛ネットをかいくぐり、２人を追う。

銃で撃ってもすぐさま再生してしまう。既に持ってきた弾倉の半分近くまで使ってしまったレイ。

しかし鬼は不死身ではない。森で野生の鬼に出くわした時、農園の追手が確かに野生の鬼を仕留めていた。記憶を巡らすレイはある事を思い出す。追手は野生の鬼の”目”にとどめを刺していた。

エマに弓で鬼の”目”を射るよう叫ぶレイ。エマが矢を放つと鬼の目へ刺さり、そのまま鬼は倒れる。再生はしていないようだ。

最低限の反撃だけしつつ、鬼の群れ同士をぶつけて自分達から目を逸らす作戦で逃げていく２人。


なんとか逃げ切った２人の前にオジサンが現れる。

「私達　ザコだけどまだ生きてる」

生き抜いたし鬼の殺し方も判った。しかし往復で最短あと７日もあるのに、残っているのたった３３発。レイは上等だ、と言い乾いた喉を水で潤す。



ー3日目の朝

エマもレイも目の下にはくっきりとしたクマが。昨日も一昨日も夜中に鬼に襲われ、ほとんど眠れていなかった。そんな２人に対し、オジサンは至って元気な様子だ。

いつどこから襲われるか分からない、それはオジサンだって同じはず。身の隠し方、危険の察知、鬼への対処、銃の腕・・・必ず学び奪って(とって)やると決心するレイ。


鬼に出くわし対処しながらも懸命についてくるエマとレイ。ペースも予定通り、身なりはボロボロだが２人の目は死んでいなかった。

そんな希望に満ちた目を見て、胸焼けを感じるオジサン。

“明日　ゴールディ・ポンドで始末する”


夜ー
エマがペンで確認すると、現在地は”A07-63。目的地であるA08-63はすぐそこだ。

レイは心配していた。オジサンは特に何も仕掛けてきていない。しかし諦めてはいないはず。何か仕掛けてくるなら明日、ゴールディ・ポンドだと察するレイ。


２人は焚火をしながら食事をとる。エマはふと心配になる。シェルターのギルダ達もハウスのフィル達も無事に元気でやってるか。旅に出る前、オジサンに言われた言葉が気になっていたエマ。

この判断で正しいのか、間違ってなかったか。

自分は迷ってはいけないって分かってる。でもエマは怖かった。もし選んだこの道が間違っていたら、自分の判断や理想が仲間を殺してしまったらー

それで仲間を失ってしまったのなら、オジサンはどんなに恐ろしく辛かったのだろう。シェルターの壁に刻まれた「HELP」の文字がそれを物語っていた。

駆け引きなんてやめてオジサンと肚(はら)割って話したい。


「私がオジサンを助けてあげる」

オジサンに声をかけるエマ。

敵対する必要はない、脱走者同士解り合えるし協力し合える。肚割って話そう。そう訴えるエマに、肚割る気も話をする気もないから失せろと言葉を浴びせるオジサン。

それをさらに拒否するエマ。

「辛かったんでしょう？」

その言葉にオジサンの表情が変わる。

「いい家族」だった仲間たち、大好きだった仲間たち。失って悲しくて悔しくて憎くていっぱい苦しんで、何年も一人で、ちぎれそうな思いで毎日を繰り返して来た。

お前に何がわかると言われ、「わかる」なんて言えないけど解るよと返すエマ。

私達家族とオジサンの仲間、そっくりだったんでしょう？だから私達を見るのが辛いんでしょう？エマは続ける。

自分達を消しても憂さ晴らしにしかならない。結局は何も変わらない。だから変えようよ。そんなエマの言葉にどうにもならないと返すオジサン。

お前に何ができるんだ、そう問うオジサンに”共に生きられる”と答えるエマ。

二年以内にGF(グレイス＝フィールド)へ戻る。そして置いて来た４歳以下の弟妹とその他全ての食用児を解放し、人間の世界へ連れて行く。

「オジサンも行こう一緒に　人間の世界へ　仲間が見たかった世界を見よう！」

自分達も、失った一番の親友ノーマンが見たかった世界を見る。生きたかった世界を生きる。仲間の想いを継ぐことはできる。

そんなエマの言葉に昔の光景が浮かぶオジサン。

自分だけが生き残れた。仲間に生かされた。だから"あの場所"から逃げて来られた。自分だけが。

「共に生きる？」クソくらえ。GF全員？ますますムリだろ。決めただろ、殺すのはこいつ。こいつをゴールディ・ポンドで殺すんだ。



「今すぐ引き返せ　GP(ゴールディ・ポンド)には入るな」

真剣な表情のオジサン。

レイは何者かの気配に気づき、エマに伏せるよう叫ぶ。

しかし何かに捕まってしまうエマ。



ー目が覚めたエマ。
目の前にはカラフルな建物が並び、絵本のような街並みが広がっていた。

目の前にはカラフルな街並み。

エマは街を歩いてみるも、人っ子一人見当たらない。村に畑に森にお屋敷。人間が住んでいるようにも思えるが、ここは鬼の世界。

そして無傷な自分。一体どういうことなのか、レイ達を探さなければ。そう考えるエマを背後から見つめる子供がいた。気づいて後を追うエマ。



ー昨夜
何者かに連れて行かれるエマ。追おうとするレイをオジサンは止めに入り、この場を去ろうとする。

エマは”密猟者”に捕まったらしい。オジサンが２人を始末する手段として引き寄せたのだ。

野生の鬼は普段銃弾など浴びないし、あんなに再生痕だらけにもならない。初日にでくわした野生の鬼に、わざと多めに弾を撃って”奴ら”をおびき寄せたのだ。

オジサンと仲間達も昔それで捕まってしまったらしい。

エマを奪(と)り返すと言うレイに、お前まで死ぬことになると止めるオジサン。オジサンは今はもう２人に害を加えるつもりはないと言い謝罪するも、せめてレイだけはシェルターに無事に連れ帰ると言う。


一方、エマはペンを使い現在地を確認。映し出された文字は”A08-63”。目指していたゴールディ・ポンドがまさに今いる場所であった。

ふと横を見ると立札に”RULES(ルール)”という文字が。その下には1.MUSIC(音楽)、2.MONSTERS(怪物)、3.SURVIVE(生き残れ)と書いてある。

突如けたたましい音楽が町中に鳴り響く。

「怪物が来る　早く隠れた方がいいよ」

先ほどエマを見ていた子供が現れる。

音楽が鳴って”奴ら”が現れる。放し飼いにしている食用児を金持ちの人食いが狩りに来る。

ゴールディ・ポンド。この場所は人狩りの庭、人食いの狩猟本能を満たすための”秘密の猟場(かりにわ)”であったのだ。



「ここは農園じゃない　バイヨン卿って一お貴族様の私設の”庭”」

子供はエマに説明する。何らかの特例で農園から子供達を生きたまま”入荷”している。子供達のほとんどは”鬼”のことも農園の真実も何も知らない。

ここから早く離れようと子供が提案するも、悲鳴がどこかから聞こえ、エマは走っていく。


森の中では幼い子供２人が鬼たちに囲まれていた。それを木の裏から様子見る1人もいる。

「10秒あげるよ」

“三人”の中から狩られる一人を選べと言う鬼。木の裏にいる子供の存在にも気づいていた。カウントを始める鬼。

どうせ三匹とも狩り殺すつもりだろうに、”レウウィス公”はその様子を陰から見ていた。狩りは互いに命を懸けるから面白い、それが今はどうだ。そんな事を考えていたレウウィスは他の人間の気配に気づく。エマだ。

エマは子供達を囲む鬼の目めがけて、斧を投げ飛ばす。瞬時に移動して斧をキャッチするレウウィス。気が付くととエマも子供達の姿も消えていた。

“目を狙った”　

我々のどこが急所なのか知っている。あの状況で怯むことなく飛び込んできた。”殺す気で”。久々に楽しめるかもしれない。レウウィスは仮面の下で不気味に笑っていた。



ー言葉も解る、頭もいい。人型でお面被ってて文化も文明も持ってる。ここにいる鬼たちは知性を持った鬼。なんて場所に捕まってしまったのか、でもこれはチャンスだ。そう考えるエマ。

ひとまず無事に離れられた？そう思うエマを最初に出会った子供が引っぱたく。

ここにいる鬼について尋ねるエマ。この敷地にいる鬼の顔ぶれはいつも同じで、手下を入れなければ５匹。狩りは３日に一度。人間の数は最大で５０人だと言う。

そしてそれよりさっさと逃げて身を隠した方がいいと言われるエマ。助けた幼い子供たち、テオ・モニカ・ジェイクも自分達は大丈夫だから行ってと告げる。

そんな子供達に別々に逃げようと提案するエマ。風下に逃げて足跡もできるだけ残さないよう教える。それでも見つかった時は”GF(グレイス＝フィールド)出身"である自分を探して狩るよう告げる。

また後で会うことを約束し、二手に別れる子供達。

自分だって生きるために狩りをするけど、こんな弄ぶようなやり方は許せない。

「できることなんてわずかかも　それでも一人でも多く逃がしたい」

エマは鬼の近くにいるけど、鬼に気づかず怯えている人達を、鬼より先に見つけて逃がすと言う。


ー狩りに出ている鬼たちは、獲物が急にいなくなったことに気づく。その裏ではエマたちが子供達を誘導し逃がしていた。

エマのアドバイス通り、風下へと逃げていたテオとモニカ、ジェイクの３人。突如目の前にレウウィス公が現れー

出来るだけ１人でも多くの人達を見つけて誘導し、鬼から逃がしていくエマ達。

“逃げ切ってみせるー”

エマがそう思ったと同時にけたたましい音楽が街中に響き渡る。狩り終了の知らせだ。

エマはテオとモニカ、そしてジェイクを探し始める。テオの背中を見つけたエマは声をかけようとするも、ある事に気づく。そこにはモニカとジェイクの姿がなかったー


数刻前ー

風下に隠れていたテオ達の前に、突如現れたレウウィス。エマが子供達に”どう指示したか”察していたのだ。

逃げる３人。テオは焦る。”あいつはグレイス＝フィールドだ”って言わなくちゃ。でもそんなこと言ったらエマが危険な目に合ってしまうー

そんなテオの前にいつの間にか回り込んでいたレウウィス。

“兎狩りの趣味はないーが 全ては君をより強く美味くするため”

エマの”敵意”を自分に向けたいレウウィス。テオに向かって斧を振りかざすも、ジェイクが身を盾にしてテオを守る。

ジェイクは先ほどの狩りで、鬼に囲まれたテオとモニカを陰から見てることしか出来なかった事に後悔していた。いいから早く逃げろと笑顔で言うジェイク。

“生きるんだ テオ！！”

走り出すテオとモニカの後ろで、レウウィスはジェイクの首に容赦なく斧を振りかざす。

泣きながら逃げる２人。しかし背後には既にレウウィスの姿が。モニカが気づいた時には、時既に遅し。血しぶきが辺りに舞う。


テオの前に立ちはだかるレウウィス。”テオ達”はまだ殺さないと言い、血で濡れた斧をテオに渡す。その憎しみを糧に自分を殺しに来るがいいと告げる。そしてあの赤毛の子にも伝えてくれと続けるレウウィス。

「我が名はレウウィス　さぁ…逃げ回るばかりでなく　君も私を狩りに来給(たま)え」



２人を救えなかったことに打ちひしがれるエマ。

“秘密の遊び場？そんなのふざけてる。そんなことのために二人は殺された。ゆるせない。”

歯を食いしばるエマに、最初に出会った子供が話しかける。どうやらエマに会わせたい人がいるらしい。

大きな風車の建物に連れて来られたエマ。子供がノックすると大男がドアを開ける。”アダム”と呼ばれていた大男はエマをじっと見てくるが、気にせず奥へと進む２人。

そこには何人かの人間がいた。エマを連れてきた子供によると、自分の仲間だと言う。

救護担当のサンディとザック、機械類担当のナイジェル、副リーダーのソーニャ、食料担当のペペとジリアン、ポーラ。次々と紹介していく子供、自分はヴァイオレットだと名乗る。そしてリーダーのオリバー。

全部で９人。この猟場(かりにわ)で何か月、あるいは何年も生き残ってきたメンバーだった。エマと同じく”真実”を知っており、ここの人間達の生活を回しているそうだ。

自分も自己紹介をするエマ。みんなも”脱走者”なのかを尋ねるも、全員生きたまま出荷されたのだと返すオリバー。

全員がバイヨンご御用達の”グランド＝ヴァレー”農園出身。他の農園出身はエマを含めて”3人”だけだそうだ。


武器がたくさん詰まった箱を持ってくるナイジェル。鬼が人間に与える武器だと言う。どうせ殺せないのにわざわざ支給してくるのだと言う。

これまでこの武器を手に戦って死んで行った仲間達。一方で事態を受け入れられず、武器を手に取ることもなく命を落としていった子供達。

何人も何人も殺されてきた。それでも耐えて甘んじて生き延びてきた９人。それは自分達の手でこの狩場(かりにわ)を終わらせるため。

密猟者を殺して皆で”人間の集落”へ逃げると言うオリバー。力を貸してほしいと頼まれたエマは了承するも、１つ疑問があった。それは、なぜみんなが脱走者でもないのに農園や鬼のことを知っているのか。

“彼”から聞いたのだと答えるオリバー。唯一の大人で”彼”のことは内緒だと言うメンバー達。奥から杖をついた男が現れる。

「初めまして　僕はルーカス」


“ルーカス？”

みんなは去っていき、２人きりになった部屋。エマは驚きを隠せないでいた。

「出身はGB(グローリー＝ベル)ですか！？ひょっとしてB06-32から来て…オジサンのー」

後ろを向くルーカス。杖を持つ手は震えていた。

「”あいつ”は生きてるのか・・・？」

その言葉に頷くエマ。ルーカスは泣きそうな表情で喜び、そして安堵する。



ー13年前

レウウィスに追われるルーカスは、オジサンだけでも確実に逃がすため自分が囮となる。

片腕を失い足を引きずりながら何とか木の陰に隠れるルーカス。血の跡を追ってやってきたレウウィス。

ここまでか、そう思った瞬間、どこからか女の子が現れ自分を匿ってくれたと言う。

その子は絶対に見つからない場所で”ずっと”かくれんぼをしていた。ルーカスも１３年間、一度も見つからず”いない人間”になった。自分の生存を知っているのはエマとアダム、そしてあの９人だけだと言う。

それから８年、一人で逃げることも考えたルーカス。しかしその度に頭によぎるのは、殺された仲間の無念や、わけもわからず逃げ惑う子供達の恐怖だった。

「この狩場(かりにわ)を終わらせたい　密猟者(あいつら)をゆるせない・・・！」

その想いから、同じ想いを持つ子供達を束ね、技術や情報を伝え共有してきたのだと言う。

そして、ここを去るわけにはいかないもう１つの理由があった。それはミネルヴァさんが食用児をここに呼んだ理由。

この風車と森に繋がる抜け穴、その先に鍵のかかった入れない扉があった。その鍵はエマやオジサンが持っている”ペン”。ルーカスはその扉の元へエマを案内する。



一方、エマを助けるため密猟者を追ってきたレイとオジサン。今どこなのか、レイが尋ねるとペンで現在地を確認するオジサン。”A08-63”の文字が映し出される。２人は既にゴールディ・ポンドに辿り着いていたのだ。

しかし何もない。シェルターと同じで狩場(かりにわ)は土の中にあったのだ。

入れば地獄、次生きて出られる保証はない。

オジサンは決心し、レイを連れてゴールディ・ポンドの入口へと向かうー