『約束のネバーランド』9巻【ネタバレ有】ゴールディ・ポンドにて子供たちの反乱が幕を開ける！

「さぁ　ここだ」

風車の抜け穴へと入りハシゴを下って行くルーカスとエマ。暗い道を進んでいくと、目の前に扉が表れる。

“全ての答えがこの扉の先にある”

扉にはモールス符号で書かれた”PEN”の文字。エマがペンの蓋をズラすと、扉の鍵が反応しドアが開く。

恐る恐る部屋へと入って行く２人。そこには多数のモニターが並んでいた。どうやらこの狩場(かりにわ)の制御室、あるいは監督室のようだ。

なぜこんなものがここにあるのか、考えるルーカスはエマに呼ばれさらに奥へと進む。そこには金色に輝く池があった。まさに”ゴールディ・ポンド”だ。

ミネルヴァさんは”この池”に自分達を呼んだのではと推測するエマ。もしかしてこの場所は元々密猟場ではなかったのか？だとしたらなぜ密猟場になってしまったのか。

２人は池の中にただずむ小屋を発見する。浮いているように見える小屋。水の透明度や光の屈折でそう見てるだけか？ルーカスは池の水に手を入れてみると、水に触れることができない。

水ではない？不安に思うも２人は池の中を歩き、小屋へと足を進める。小屋へと到着したエマがドアを開けると、そこにはエレベーターが。

「これに乗れば人間の世界へ行ける……とか…？」

エマが発した言葉に２人はまさかと笑うも、考えられない話ではない。試してみる価値はある。

エレベーターの操作盤にフクロウのマークを発見したエマ。またも”PEN”のモールス。隣の穴にペンを挿し込んでみると、大きな機械音と共にエレベーターが動き始める。しかしすぐに停まってしまう。

どうしてなのか、操作盤をもう一度確認する2人。

“ジリリリリ”

突如鳴り響く音に２人が振り向くと、そこには黒い電話があった。

恐る恐る受話器を取るエマ。電話口の相手はウィリアム・ミネルヴァだと名乗る。

驚く２人。しかし録音を流しているようだ。ミネルヴァはこのエレベーターは人間の世界へ渡れる”道”だが、今はもう使えないと告げる。腹心の裏切りにより止められてしまったのだと続ける。

自分がつくった”集落”も安全ではないのだろうと言うミネルヴァ。

「私の本名はジェイムズ・ラートリー　1000年前彼らと”約束”を結んだ一族の末裔です」


ミネルヴァは第35代当主。人間の世界のために、食用児にひたすら犠牲を強いる”約束”を代々受け継いできた。

人間の世界のために自分の職務を放棄することはできない。けれどこの理不尽に一人の人間として耐えれなかったのだ。

”ウィリアム・ミネルヴァ”という架空の人物を名乗り、農園に納める本へ細工。その細工に気づいた子達だけでもせめて安全な隠れ家を、そして秘密で渡れる抜け”道”をー

そう考えていたミネルヴァだったが、この録音を聞いてる頃にはこの世に自分はいないだろうと告げる。

そして”道”は一つではないことを伝えるミネルヴァ。その”道”は高級農園の中にあると言う。GF(グレイス＝フィールド)、GB(グローリー＝ベル)、GV(グランド＝ヴァレー)、GR(グッドウィル＝リッジ)の４つ。

驚くエマとルーカスに、望む未来を叶えるよう告げるミネルヴァ。秘密裏に人間世界へ逃げたければ支援者を送る。あるいはこの世界を、歪んだ秩序を、あの”約束”を壊したければ壊せばいいと言うミネルヴァ。

「もし君の望む未来が　そのどちらでもなかったら　七つの壁を探しなさい」

エマはムジカも”七つの壁”について言ってたことを思い出す。

ここまで頑張ってきた２人を労うミネルヴァ。あとの詳細は”マーヴィンの寝床”に、と言い残し電話は切れてしまう。


ミネルヴァが味方だったこと、そしてミネルヴァの真意を知れたことに喜び安堵するエマとルーカス。

２人は詳細を知るため”マーヴィンの寝床”を探る。

ミネルヴァの冒険小説「ウーゴ冒険記」に出てくる相棒のキツネザル、それがマーヴィンだ。彼が好んで眠った場所、それは”引き出しの中”。

電話台の引き出しを開けるエマー



ー2031年9月

兄さん、僕はあなたを裏切った。でもあなたこそ僕を一族を人間世界を裏切っている。食用児に脱走を促すばかりでなく”あんな場所”まで与えようとは。あれは蜂起した食用児達の拠点になる。

シェルター程度ならまだしも、あの場所だけは絶対に存在を許してはいけない。


ラートリー家、第36代当主”ピーター・ラートリー”。彼は廊下を歩きながら考えを巡らせていた。

“食用児は誰一人 人間の世界へ渡らせない　そう望む食用児は一人残らず抹消する”

ピーターは扉を開け部屋へと入って行く。そこにはバイヨン卿の姿が。ピーターは”折り入って話が”と声をかけるー


ー2046年1月

エマは引き出しを勢いよく開けるが、中身は空。奥に手を突っ込み板を外すと、小さなボタンのような物が出てくる。

“ペンの端の部分だ！”エマがその部品をペンに取り付けると、大量の情報が目の前に映し出される。部品はメモリチップだったのだ。

行き来の”道”について、”支援者”との連絡のとり方、ゴールディ・ポンドの設計図、”七つの壁”についてなど、全ての情報が揃っていた。

残るファイルは”ラムダ7214計画”。ファイルを開くと、「西の果てに建設予定の新しい試験農園」との情報が。しかしそれだけしか書かれていない。

エマは疑問に感じるも、２人は風車へと戻っていく。


狩場を終わらせ無事に出て、”人間の世界へ！！”

話を聞いて喜ぶメンバー達は、次の狩りで全てを終わらせることを決意。いつも通りの周期なら次の狩りはあと２日か３日後。それまでに残る全ての準備を整えると言う。

全員集まるよう声をかけるソーニャ。エマはアダムは呼ばないのかとヴァイオレットに尋ねるも、アダムはあまり言葉が解らないそうだ。

どこから来たのかも分からないし、たまに喋ったと思ったら独り言で同じ数字を繰り返してるだけ。何の数字だっけ、と思い出すヴァイオレット。

その隣にいるエマを遠くから凝視するアダムは、数字を繰り返し呟いていた。

「22194　22194・・・22194」

他の農園出身者は自分を含めて”3人”。恐らく自分とルーカスとアダムだ。エマは考える。

アダムの胸にあった紋章は量産農園のものなのか？でもシェルターの資料にあのマークは載っていなかった。アダムはもしかすると、西の果てに建設中と書いてあった”新農園”出身かー


場面は変わり、どこかの部屋。時計は午前６時と表示されている。モニターから流れる音声に反応する少年。

「おはようございます　博士(ドクター)」

少年の首元には”22194”の文字。その姿は”ノーマン”だった。

用意された朝食を食べたノーマンは他の部屋へ移動し、テストを受ける。その結果は全問正解。ハウスにいた頃と同じく毎日フルスコアを叩き出すノーマン。


“会いたい”

エマにレイにみんなに会いたい。ノーマンは、みんなが無事に脱獄できたのか心配でたまらなかった。


ノーマン出荷当日ー

ハウスを出発し、門へ辿り着いたママとノーマン。ここで待っていてと告げられた部屋へ入ると、そこには鬼の姿はなく男性が立っていた。

新しいお父さんよ、と男性を紹介するママ。男性は”ピーター・ラートリー”と名乗り、ノーマンに研究を手伝ってほしいと告げる。

戸惑うノーマン。しかしすぐに状況を理解する。これも”出荷”でありこの男も捕食者側。飼われる先が変わっただけ。

“でも　まだ　生きてられる”

生きていればまたエマ達と会える可能性があると考え、新しい施設へ移動することに了承したノーマン。


施設では自分以外の食用児を見かけない。そしてこれは研究でなく自分を使った”実験”。この農園は一体何を創り育てているのかー

部屋に戻ったノーマン。この部屋にはカメラが6台あり、音声も拾われ常に監視状態。部屋の出入りも自由ではなく、もちろん発信器もつけられている。脱出は不可能だ。

しかし絶対にここから逃げ出してやると意気込むノーマン。

“生きて生きて生き延びて　ボクは必ず皆と会うんだ！！”


ノーマンは部屋に戻る途中、大きな部屋の前を通過していた。通路側からは見えないようになっていたが、中からは通路の様子が伺えるようだ。

部屋の中にはぬいぐるみを抱えた大男が。大男”アダム”はノーマンを凝視し、呟き始める。

“22194”とー



最後の狩りに向け、準備をするメンバー達。

エマは鬼の殺し方をみんなが既に知っていたことを知る。しかし鬼側はそれを知らないし、自分達が殺す気でいることも知らない。自分達は”逃げ回るしか脳のないザコ”、そう見えるように振舞ってきたと言うソーニャ。

ソーニャは、敵の強さはわかっているが勝つのは自分達だと言うも、レウウィス大公は要注意だと告げる。


かつてルーカスと仲間達は、一人も死なすことなくこの狩場(かりにわ)を生き延びていた。ルーカスの親友でリーダー格の少年が上手く指示を出し、戦略的に守り逃げていたのだ。

リーダー格の少年が”オジサン”であることに気づいたエマは、そのまま話を聞く。

ルーカス達は凄い集団だったが、レウウィスに目をつけられた途端に壊滅させられたと言う。一人一人なぶり殺して、ルーカスとその”親友”の憎悪を煽っていく。追いつめて狩りを楽しむためにー

怒りで表情が険しくなるエマ。

ーごはんが出来たと子供達を招集するジリアン。配給されたごはんを両手にエマが向かったのはテオの元だった。

昨日は眠れたかと聞くエマに、あまり眠れなかったと返すテオ。昨夜ヴァイオレットが訪ねて来て、メソメソすんなとビンタされたと言う。

そしてテオとテオの兄妹(かぞく)を見殺しにした、と謝ってきたヴァイオレット。

“助けられない他人”には見て見ぬフリをしてきた。他人じゃなくなると辛いし、ここの人間達はみんなバラバラだと奴らに思わせておきたかったから。でもそれもおしまい、次の狩りで全てを終わらせる。

「仇をとろう　あんたの兄妹(かぞく)の分も　オレの姉弟(かぞく)の分も」

そんなヴァイオレットの言葉に、辛くて苦しいのは自分だけじゃないと気づいたテオ。そんなテオに、次の狩りで終わらせようと声をかけるエマ。

広場ではリーダーのオリバーが、子供達全員に計画を話そうとしていた。集まる子供達。

突如、けたたましい音楽が広場に鳴り響く。

レウウィスを先頭に歩き始める鬼たち。

昨日の今日、早すぎる狩りの再開に信じられない子供達。



ー今朝

テーブルを囲んで朝食を楽しむ鬼達。

GF(グレイス＝フィールド)からの脱走者をこの狩場に捕らえている情報が共有される。他にもあと二匹いたが部下が見失ったと言うバイヨン卿。

捕らえたメスは”特上”、他一匹も”特上”。もう一匹は成人(おとな)。

その情報によって、昂りが最高潮になった鬼達は狩りを開始。人間の街へと向かう。

しかし街には誰の姿も見当たらない。全身真っ黒の鬼の片方は、住居へ入り匂いを辿る。すると外から物音がする。子供だ。

手下を連れた鬼は、その手下達に命令して子供の後を追わす。走って逃げる子供はジリアン。ジリアンは不敵な笑みを浮かべる。


ー数刻前

鳴り響く狩りの合図によってパニック状態の子供達。

そしてオリバーも焦っていた。準備は大方済んでいるが、全員を含めた最終確認は何一つ行っていなかった。どうすればーと悩むも覚悟を決めたオリバーは、子供達に大丈夫だから落ち着こう、と声をかける。

少し早いが準備は出来ている。計画通り討ち果たす。

「想像するんだ　明日の今頃は自由　全員自由だ」

自由になるのが一日早まっただけだ、と言うオリバーの声に耳を傾ける子供達。オリバーは全員武器を持って配置につくよう指示をする。


子供達は抜け道に隠してルーカスとアダムが守る。エマを含むメンバー10人は4隊に分かれ、鬼を4組に分断。

レウウィス、バイヨン、ノウスとマウス、ルーチェ。

一番厄介なレウウィスを引きつけるのはエマとオリバー。攻撃はせずに15分引きつける。その15分で他3組の鬼を倒し、そのあと全員でレウウィスを討つ作戦だ。

“たった15分　一度きりの勝負”


それぞれのメンバーがそれぞれの鬼達を引きつけていく。

追い詰められたジリアンがフードを取ると、”グレイス＝フィールド”じゃないことに怒り狂うルーチェ。

「いいえアンタの相手は私よ」

ジリアンが笛を吹くと、他のメンバーも笛を吹く。それは合図であった。オリバーがスイッチを押すと森で爆発が起きる。

煙に撒かれる鬼達。その隙に木の上へと移動したジリアンとナイジェル。

「さぁ　計画実行　狩りの時間だ」

爆発は西側の森辺り。人間達の反乱に気づくも、不気味に笑うバイヨンとレウウィス。


木の上から鬼を狙うメンバー達は、今まで死んでいった家族や仲間達を思い出す。

ルーチェに姉を殺されたジリアン、目の前で幼い妹を切り刻まれたナイジェル。ノウスとノウマに仲間を殺されたソーニャととサンディ。


ジリアンは銃を構える。狙うは仮面の下、目の奥の核だ。

“ブチ抜いてやる！！”

放たれた弾丸がルーチェの仮面に命中。ルーチェと手下達に位置を特定されるも、ジリアンはマシンガンを両手に抱え容赦なく弾丸を撃ち込んでいく。

鬼の急所である”目”を撃ってきたのはマグレだ、と考えるルーチェの仮面にまた弾丸が撃ち込まれる。ナイジェルだ。

“マグレじゃない！！”

自分を殺すつもりだと確信するルーチェ。しかしいくら撃たれようが自分達は再生する。

手下に子供達を殺すよう命令するルーチェ。ジリアンとナイジェルは休む間もなく弾丸を浴びせていく。


気づくとルーチェの手下は全員死んでいた。焦るルーチェ。

ジリアンとナイジェルは最初からルーチェでなく手下達を狙っていたのだ。貴族の鬼達がつけている仮面は硬い。手下の仮面も硬さは同じ。しかし目の周り以外は比較的簡単に破れるといった弱点があった。

再生の隙を与える間もなく連射して、横から正確に顔ごと仮面を剥ぎ取る。あくまで狙いはルーチェ自身と思い込ませ、その隙に戦力を奪い取っていった２人。ルーチェは手下がいなければ大した腕力もない。

ルーチェは逃げ出すが、すぐに捕まってしまう。

“なんでボクが食用生物(にんげん)なんかに！！”

ジリアンはルーチェの仮面を外し、顔に銃をつきつける。

何でも欲しいものをやるからせめて見逃せ、などと御託を並べるルーチェ。

「ムキになるなよ　ただの”遊び”だろ！？」

こんなしょうもない奴に自分達の家族は殺されたのか。ルーチェの言葉を遮り、ジリアンはルーチェの目に銃弾を撃ち込む。

ここまで６分22秒。次へと急ぐ２人。


同じ頃ー

ノウスとノウマ相手に、武器を使って対処するソーニャとサンディ。

このつくられた狩場(かりにわ)の内では、人間達に勝ち目はない。殺し方を知っていても仮面が硬いし再生もする。支給された武器を普通に使っても斃(たお)せない。

やりようによっては殺せる見込みもあるが、せいぜいルーチェぐらい。化物な他３組には絶対に通用しない。


走っていた足を止めたノウス。目の前には罠が張り巡らされていた。

闇雲に逃げていたわけではなかったソーニャとサンディ。しかしたとえ罠にかけて動きを封じ込めれても、飛び掛かって面を取るなどできない。どうしようもない。

面は剥げねば壊すしかない。けれど与えられた武器では壊すことができない。ならばつくればいい。

ルーカス達は、手に入った材料で面を壊せる武器をつくっていたのだ。８年かけてできたのは特殊弾5発と専用銃3丁のみ、失敗は許されなかった。

バイヨンに１発、レウウィスに２発、そして残る２発でノウスとノウマを仕留める。

まずは罠で動きを止めて撃つ。それが２人の作戦だった。


“これ"で我々をどうするつもりなのか、試しに森に張り巡らされた糸を切るノウマ。巨大な丸太や毒矢が次々と襲い掛かる。最初の罠に引っ掛かることで、自動的に次の罠が発動する仕組みだ。

高い身体能力によって罠をかいくぐっていくノウスとノウマ。

こんな罠はくらわない。狙うのは罠の渦中、２人が獲物(自分達)を目にした時。ソーニャとサンディは、罠を辿って自分達の目の前まで迫ったノウマとノウスに銃口を向ける。

辺りが急に明るくなる。閃光弾だ。

よろけるノウスとノウマ。２人はすかさず顔に向かって特殊弾を撃ち込む。

仮面が粉々に割れたノウスとノウマ。ノウマはすぐさまソーニャを捕まえる。片手でソーニャの首を締めながら、甘く見ていたわと笑うノウマ。

陰からその様子を伺うサンディの元には、ノウスが歩いて来ていた。

苦しむソーニャ。閃光からノウマがこんなに早く立ち直ったのは誤算だった。捕まるつもりではなかった。だけど”これでいい”。

次の瞬間、ノウマの顔面に一発の銃弾が撃ち込まれる。

血を噴き出し崩れ落ちるノウマ。木の上には人間の姿が。ヴァイオレットとポーラが狙撃手としてずっと潜んでいたのだ。

鬼の目を狙うと言っても、的は狭いし動きを止めてくれない。でも狙いやすい状況はある。それは”敵が獲物に夢中になっている時”。

“狙い通り”に事を運んでいたソーニャとサンディ、そしてヴァイオレットとポーラ。あと一匹倒せばー

ノウスの方へと目をやるソーニャとサンディ。そこにはノウマを抱きかかえ泣き叫ぶノウスの姿があった。