『約束のネバーランド』11巻【ネタバレ有】ゴールディ・ポンドから脱出できるのか？レウウィスとの闘いの行方は？

レウウィスの顔面へ放たれた弾丸。エマが目線を上げると、そこには銃を構えたオジサンとレイの姿があった。

面が割れたレウウィスにすかさず爆弾を投げるペペ。しかしそれは爆弾ではなく閃光弾。至近距離での強烈な光は視覚を奪うだけではない。色々な感覚を奪い狂わせる。

ふいをつかれたレウウィスは、視覚を奪われ眩暈によってふらつく。

“いける！！今なら討てる！！”

エマが銃を構えた瞬間、レウウィスは割れた面の破片を四方に投げ飛ばす。その内の１つが体に当たり、思わず声が漏れてしまうペペ。

次の瞬間、ペペはレウウィスの長く鋭い爪で肩を裂かれる。血を噴き出し倒れるペペ。

レウウィスは目が見えていないはず。しかし面の破片を飛ばし、それが人やモノに当たった音でそれぞれの位置を把握したのだ。

オジサンは場所を変えて狙い直すも、攻撃を防がれてしまう。逃げるオジサンとレイ。

「ドキドキしたぞ！！何百年ぶりだ！！？」

声を上げて笑い、この攻防に興奮を隠せないレウウィス。その勢いのまま建物を倒壊させる。


建物内へと隠れるエマたち。ぺぺの止血はしたものの、これ以上は何もできない。置いていくしかなかった。

面を割り、閃光も食らわせ効いている。今が奴を討つ千載一遇のチャンス。

ナイジェルは態勢を立て直し、場所を変えてもう一度急所を狙おうと提案するも、ムダだと返すオジサン。

奴は殺せない、やはり化物だ。このままではまたー
１３年前の惨劇を思い出し、吐き気を催すオジサン。

できることなんて何もない、今の内に奴の目を盗んで逃げるしかないと主張するオジサンに、エマは今逃げたら全員を助けることができないと返す。

逃げたって追いつかれる。全滅するかもしれない。まだ手はきっとある、そう言うエマに、このチャンスまで失えば逃げることすらできなくなると返すオジサン。

「でも今ここで逃げたら　誰かを犠牲に生き残る道へ逆戻りだよ」

これ以上誰も失いたくないでしょう？
エマは訴えかける。

今日全員が自由になる。狩りに怯える毎日は終わり。全員鬼のいない世界へ行ける。退かなきゃいけない時もある。でも多分それは今じゃない。”今度こそ”全員でこの密猟所(かりにわ)を出よう。

そんなエマの言葉に、うぜぇと言いながらも”エマに従おう”と返すオジサン。

初めて名前を読んでもらえたことに喜ぶエマは、オジサンの名前を聞くも、無事にここを出れたら教えてもらえることに。

まずはレウウィスを倒し、ここを無事に全員で脱出しなければならない。

どんなにヤバくても奴も所詮”生物”。核を撃てば死ぬし弾丸をくらえば傷がつく。電気も効くし感覚も狂う。ちゃんと”死”のある”生物”だ。

「奴も殺せるはずなんだ」

そんなレイの言葉に、１つ気になったことがあると言うエマはみんなに話を始める。


ーエマが窓辺をふと見ると、そこにはレウウィスの飼っている猿、パルウゥスの姿が。大きな声で鳴き、主人に居場所を知らせるパルウゥス。

レウウィスは建物を襲撃。エマたちは走り出す。

奴の目はまだ見えていない。今度こそ終わらせる、これで勝つ。

「それじゃみんな　この作戦で行こう」



ー数刻前

1つ気になったことがあると言ったエマ。それはレウウィスが撃たれた時に、なぜ手をすぐに再生しなかったのかだ。

ナイジェルが撃ち抜いた左手は結構深い傷であったのに、レウウィスは建物を壊す直前までそのままだったのだ。

再生限度回数が決まっていたり、再生するのにもの凄いエネルギーを消費したり、”再生”に何らかの不利点があるかもしれないと予想するレイ。

「撃ちまくろう」

閃光弾が効いてる内にとにかく狙いまくる。完全に感覚を取り戻す前に、できるだけ多くの傷をレウウィスに。



建物内へと誘いこむエマ。近づいてきたレウウィスに間髪入れず弾丸を撃ち込むエマとレイ、ナイジェルの３人。

目が見えてない今、この狭い屋内でなら人間の方が有利だ。元の作戦で使うはずだった武器もたくさん隠してある。

子供達が戦い方を変えてきたことに気づくレウウィス。一度外へ出ようとするも、向かいの屋根からオジサンに狙撃される。

逃げるレウウィスを追う４人。

これで全員屋外に出揃った。ここから反撃だー
そう思ったレウウィスだったが、前方から瓦礫が飛んできて避ける。

そこにはアダムの姿があった。

「いけ！！アダム！！その怪物をブッとばせ！！！」

叫ぶヴァイオレット。加勢するため、いつの間にか来てくれていたのだ。

殴りとばされ、片腕が折れたレウウィスは宙を舞う。全員銃を構え、一斉に狙撃をするが防がれてしまう。しかし普通の攻撃もダメージになる。

ヴァイオレットが”投げまくれ”と指示すると、アダムは建物の一部を手で剥ぎ取り、レウウィスへと投げつける。

思いの外ガタがきているレウウィス。閃光で視神経を、銃撃で傷ついた手を、そして殴られた腕を再生している最中だ。自身の老いを感じるも、何百年ぶりかの心躍る戦いに楽しんでいた。

“目の感覚が戻るまで”

この策をしくじればエマ達が負け、それまでに策を防ぎきればレウウィスが勝つ。

銃を連射する子供達。間違いなく攻撃は効いているが、まだ足りない。

ヴァイオレットへと近づくレウウィスにエマがすかさず閃光弾を投げる。しかし同じ手は食らわない。マントを盾にして光を遮るレウウィスであったが、屋根の上からオジサンに狙撃される。

続けてアダムが瓦礫を投げつけるも、その攻撃は単調。避けられてしまう。複雑な思考や動作はまだアダムには難しいのだ。

視覚がだいぶ戻ってきたレウウィスは、アダム肘で吹っ飛ばす。

今に回復する、感覚が戻ってしまう。今が最後のチャンスー


「撃ち尽くすぞ！！」

レイがそう叫んだ瞬間、レウウィスの爪がエマの体を貫通する。

「残念　時間切れだ」

叫ぶレイ。崩れ落ちるエマの腹部からは血が滴っていた。

エマへ”本当に楽しかった”と感謝を伝えるレウウィス。

全員が銃を構えレウウィスへと狙撃するも、視力が回復したレウウィスに当てるのは困難だった。


“エマ！！死ぬな！！起きろ！！起きるんだ！！エマ！！”



ーここどこ？暗い寒い、傷口だけが燃えるように熱くて痛い。

エマは夢を見ていた。

誰かが近くで喋っている。”ウォルター、アニー、ダイナ・・・”仲間を殺されたオジサンとルーカスが泣いている。

“許せない　この狩場(かりにわ)を終わらせたい”
泣きながらそう訴えているのはオリバー、ポーラ、そしてザックだ。


そうだ立たなきゃ、斃(たお)さなきゃレウウィスを。帰らなきゃ家族の元へ。

フィル達も待ってる、私にはまだやることがある。そんな意志とは逆に、どんどん暗い水の中へ体が沈んでいくエマ。

まだ死ぬわけにはいかないー
上へと伸ばしたエマの手を取るノーマン。

「そうよエマ　諦めてはダメ　さぁいらっしゃい　あなたはまだー」

エマの手を掴み引き上げるママ。

ー私はまだ

“望む未来を叶えていない！！”

夢から目覚め、立ち上がるエマ。右手にはシェルターから持ってきた４つ口の銃が握られていた。

立っているのが精一杯で声も出ないエマだが、レイがみんなにレウウィスを包囲して撃ち尽くすよう指示を飛ばす。その指示の意図に気づくオジサン。

レウウィスへと四方から放たれる弾丸。一斉射撃だ。

弾丸は止められる、問題ない。これで終わりかと名残惜しむレウウィスは、飛んでくる弾丸の中に1つだけ違う形が混じっていること、そしてエマの持っている銃に気づくも時既に遅し。

弾丸がはじけ、辺りが強烈な光に包まれる。

“やられた”


ー目が見え感覚が戻った今、レウウィスはこの銃弾の雨をよけない。掴んで止める。紛れ込んだ異物に気づいた時にはもう遅かった。

閃光で再び視覚を失ったレウウィス。子供達は間髪入れずに銃弾を浴びせていく。

オジサンが狙いを定め、狙撃。レウウィスの目へ命中する。

「やはり人間は良い」

そう言い残し、レウウィスは崩れ落ちていったー


これで密猟場(かりにわ)が終わる。みんなの怯える毎日も、オジサンの１３年の苦しみも、これでようやく終わるー

早く手当して逃げないと。そう思った矢先、倒れてしまうエマ。

その頃、地下壕ではオリバーが目を覚ましていた。戦況は一体どうなっているのか？オリバーがそう尋ねると同時に、地下壕へと走って入ってくるナイジェル。

「斃(たお)したよ　レウウィスは討ち果たした！！全員自由だ！！」

その言葉に歓喜の声を上げる子供達。

他のみんなについて尋ねるルーカス。そんなルーカスの前に、ペペに肩を貸すヴァイオレット、そしてエマを背負ったオジサンが現れる。

目が合う２人。お互い本当に生きていたことに驚くも、２人は肩を引き寄せ合う。喜び合うのは後だ。エマとペペの手当てが済んだら、一刻も早くゴールディ・ポンドを後にしなければならない。

屋敷にはバイヨン達の手下がいる。バレる前にここを出なければならない。しかしまだ怪我人は万全な状態ではない。おまけに薬が切れてしまった。

血を止めるだけでもしないとエマは危ない状態だ。シェルターに戻れば輸血できる器具も、薬もある。今すぐ連れて帰ればきっと助かる。それができなければ死んでしまうー

４日かけてゴールディ・ポンドへ来たエマたち。しかし最短距離で突っ切れば一日半程で戻れる道もなくはないと言うオジサン。

当然、来た道よりも険しいことが予想される。そしてこの人数にこの手負いだ。どうすればー悩むオジサンに口を開いたのはオリバーだった。

「置いて行って　俺達を置いて行ってルーカス」

エマ以外の重傷者をここに置いて行ってくれと言うオリバー。

まずレイとオジサンがエマを最短の道で連れて帰り、他の皆はルーカスが元来た３週間の道で安全に帰る。重傷者がいなければ、ナイジェルとヴァイオレット２人だけでも道を守って進める。

反対するルーカスに、もう十分だよと返すオリバー。

助けてくれた。知識を技術を生きる目的を、そして家族をくれた。自分達の願い(ワガママ)をきいて一緒に戦ってくれた。自分達がどれだけ救われたかをルーカスに伝えるオリバー。

ルーカスは子供達にとって、大切な恩人で師匠で兄で、そして父親のような存在だった。だからこそみんなで予め決めていたのだ。

全員で生き残ることが第一だが、万一それが難しい状況になればルーカスと他の者だけは必ず生かして外へ。それがこの戦いを始め貫いてきた自分達のせめてもの責任だとー

足手まといになりたくない、そんなオリバーの言葉に誰も置いていかないと返すレイ。

エマは助ける。全員でも帰る。そうじゃなきゃ他でもないエマが納得しない。

ナイジェルとヴァイオレットと自分の３人で、重傷者含め全員無事にシェルターへ連れて帰ると言うレイは、オジサンにエマを託すことに。

「ここじゃなくてもまだ死ねる　ここまでやったんだ全員で帰ろうぜ」


ルーカスはナイジェルにエマのペンを渡す。”最後の手段”を今使うため、全員で無事に逃げ切るために。

シェルターにも装備されていた”緊急破壊装置”が、ここゴールディポンドの隠し部屋にも装備されていたのだ。


脱走する準備が整った子供達。緊急破壊まであと１０分。

脱走に気づき追ってくる鬼を銃で倒していく。

緊急破壊まであと2分、あと0分ー


小さな秘密の場所ではあったけど、鬼達の庭を壊滅させた。もうゴールディ・ポンドで殺される子供はいない。世界を変えた、その一歩。

フィル達の奪還、ＧＦ(グレイス＝フィールド)の解放、1000年前の約束、これは世界を変える脱獄。

“俺達もー”

色々な思いを巡らせるレイ。エマを背負ったオジサンと、互いの健闘を祈り別れる。


天井から溢れだす水が、ゴールディ・ポンドを呑み込んでいく。

2046年１月29日、ゴールディ・ポンド密猟所、崩壊ー



エマ達が出て行ってから６日。
シェルターでは子供達が、エマ達が無事にゴールディ・ポンドへ到着したか心配していた。

ドンとナットが食材を捕りに行くため、シェルターの入口へと近づくと、何者かがシェルターに入ってくる。

ぐったりとしたエマを背負ったオジサンだ。

休んでる暇はない、まずは輸血をしないとー

エマを寝かすオジサンの元へ、ギルダが現れる。その手には緊急破壊装置のスイッチが握られていた。

エマは生きてるのか、レイは無事なのか。もし二人を、弟妹達を殺すつもりならー
捲し立てるギルダ。今にもスイッチを押す勢いだ。

その様子を見て、ギルダとのやり取りを思い出すオジサン。ちがうと言っても信じてもらえそうにない状況だ。

そんな中、エマの様子を見るアンナ。脈はかなり弱いが息をしていた。

オジサンは輸血するため、エマと同じ血液型であるドンとドミニクに声をかける。レイから事前に聞いていたのだ。その様子を見て、急いで薬や熱湯を用意しに行くギルダとアンナ。


一方、レイ達は森の中で野営をしていた。
エマが無事にシェルターへと到着したか心配する子供達。

あの子がいなければ自分達は生きてなかったかもしれない。あの子のためにも、自分達も必ず辿り着いて全員元気な姿を見せたい。

そんな子供達の言葉に笑みをこぼし、同意するレイ。




ベッドの上で目覚めるエマ。

ーあれ？ハウス？これは夢？私やっぱり死んでー

エマが周りを見渡すと、レイやギルダ、ルーカスやオリバー、子供達全員の姿が。

エマが目覚めたことに泣いて喜ぶ子供達。

動けない人達もいるけど、全員生きてここにいることを知ったエマは安堵する。その様子を後ろから見守るオジサン。

助けてくれてありがとうとお礼を伝えるエマは、オジサンに尋ねる。

「改めまして私はエマ　オジサンは？」

「俺の名はユウゴ　ユウゴだ」

笑顔で握手を交わす２人。


エマが目を覚ましたのは狩場を出て４週目。レイ達は追手に追われることなく３週間で無事に帰ってきていた。しかしサンディとポーラはまだベッドから動けない状態だ。

エマもまだ動いてはいけないが、じっとなんてしていられなかった。グレイス＝フィールドの子供達を集めて、エマはフィル達を連れ戻る計画を話し始める。

ゴールディ・ポンドの隠し部屋で発見した情報を見て、驚く子供達。

行き来の道、支援者、農園の設計図、ラダム計画、七つの壁ー

支援者と連絡を取り、グレイス＝フィールドの設計図を利用してフィル達を助け出す。そして行き来の道の一つであるグレイス＝フィールドからそのまま人間の世界へ行ける。

やろうと思えば今すぐにでも人間の世界へ渡れるのだ。しかし問題がある。ラートリー家だ。

ラートリー家とミネルヴァを殺した”裏切者”が、全力で自分達を邪魔しに来る。

その状態で人間の世界へ逃げても安全とは言い切れない。そもそも逃げたところで人間の世界で自分達は受け入れてもらえるのか。気づかれたら鬼達だって追って来るかもしれない。

そして最悪、自分達が二世界の戦争を再び引き起こすキッカケになってしまうこともある。

気づかれない人数で秘密裏に逃げるか、食用児全体で鬼と全面戦争を引き起こすかー

家族もゴールディ・ポンドで出会った仲間も、誰一人失わずみんなで逃げたい。笑って暮らしたいと言うエマ。

そしてこの世界には同じ境遇の食用児が他にもいっぱいいる。

「私は全食用児を解放したい」

追われない世界にしてから鬼の世界を抜け出す。そのために”七つの壁”を探し出し、〇〇と新たな約束を結ぶと言うエマ。

“七つの壁”はムジカが、〇〇はシスターも言っていた言葉。

〇〇と約束を結び直せば、鬼のいない世界へ安全に逃げられるー

そんな大それたことができるのかと心配するナット。それについてエマはヒントをもらったと言う。

“交わされたもう一つの”約束”

資料を見せるエマ。レイが気づき、子供達に教える。

遠回りになるし簡単にだっていかない。それでも自分についてきてくれるか。エマが尋ねると笑顔で当たり前だと返す子供達。

ユウゴ達全員にも今の話を伝えるべく、部屋を飛び出すエマ。そこには既にユウゴ達の姿が。

「最高じゃねぇか　食用児なんかいねぇ世界　やってみろ」

その言葉に同意するヴァイオレットやナイジェル。

みんなだけこっそり逃げる選択肢だってあるんだよとエマが尋ねるも、エマについていく、みんな同じ思いだと返すルーカス。



ー食用児が詰められた瓶の前で電話をする男の姿。ピーター・ラートリーだ。

ゴールディ・ポンドの破壊装置が作動したことで、異変を察知したラートリーは、部下達を捜索に向かわせていた。

食用児の死体は未だ一人も見当たらないとの報告を受けるラートリー。

"どうであれ逃がさない。食用児はこの世界に必要なんだー"