『約束のネバーランド』17巻【ネタバレ有】ソンジュとムジカに再会！王都にて闘いの火蓋が落とされる

ジンの後ろを取ったソンジュは、今退けば許してやると告げる。

しかし退かないジン。自分ごとでいいから２人を殺せと子供達に指示を出す。

ソンジュを囲み攻撃を仕掛けるラダムの子供達。しかし突如うめき声を上げて倒れてしまう。発作だ。バーバラ達同様、ラダムでの度重なる実験や投薬によって体が蝕まれていたのだ。

ドンとムジカが子供達の様子を見るも、息をしていない。急がなければ手遅れになってしまう。ギルダとソンジュにも手を貸すよう伝えるムジカ。

その様子を見ていたハヤトは、薬を飲ませないといけないことをムジカに伝える。自分達では対応できない。ムジカ達に薬を渡して降参しようとジンに伝えるハヤト。


子供達に薬を飲ませ一段落着くと、ギルダとドンはムジカとソンジュに何があったのかを一から説明し始める。

自分で話していて気づくギルダ。

“ノーマン本当に・・・殺す気だったんだ”

ノーマンが自分達に言っていたことは全部嘘。最初から鬼は絶滅させる以外なくて、エマを待つ気なんかも更々ない。

涙を流しながらムジカとソンジュに謝るギルダ。

自分は２人を殺そうとしたノーマンの妹。こんなこと２人に頼めた義理ではない。しかしこのままでは取り返しがつかないー

「助けて・・・私はノーマンを止めたい　お願いします　食用児を助けて下さい。」



“約束”を無事に結び、アジトへと帰ってきたエマ。

これで誰も殺されず追われることもなく、全員で人間の世界へ逃げられる。その言葉に歓喜する子供達。

レイが“ごほうび”はどうだったのか尋ねると、大丈夫だったと返すエマ。それより今はノーマンを追って王都へ行くことが先決だ。

ノーマンは今回の作戦で、王と貴族を殺すだけではない。王都の鬼全てを殺し尽くすつもりなのだ。

「わかったわギルダ　私達も王都へ向かいましょう」

ギルダのお願いを聞き入れてくれたムジカ。一行は王都へと進路を変える。

ーデッドラインはノーマンが王・貴族を”殺し尽くす”まで。

王都の鬼への大虐殺も止めなければならないが、王や貴族を殺し尽くしてしまえば、鬼は政治機構を失う。つまり自分達にとって交渉相手を失うことだと説明するレイ。

そうなれば和平の道は絶たれ、戦争も混乱も止められない。

王都までの道のりは５日。かつ危険度外視で近道を急げば３日で行ける。しかし今日は１１月７日。ティファリまで実質あと２日半しかない。

どうすればー

考えるエマとレイの元へ、駆け寄ってくるイベット。２人がイベットについていくと、そこには馬に跨ったオリバーやザック達の姿が。

「乗れ！」

馬に乗り王都へと急ぐ子供達。

エマとレイが”七つの壁”に行っている間、オリバー達も頑張っていたのだ。



一方、ノーマン達は既に王都の近くに潜伏していた。

「ありがとな　ここまで連れて来てくれて」

ノーマンにお礼を伝えるシスロやバーバラ達メンバー。

死ぬ前にこの世界を壊せる。自分達はここで死んでも、新しい世界へノーマンや他の食用児が行ける。それが自分達の何よりの願いであり希望。

そう話すシスロに、馬鹿を言うなと返すノーマン。

誰1人戦死は許さない。全員で新しい世界を見るんだ。今こそ1000年の苦しみを終わらせよう。そんなノーマンの言葉に決起する子供達。


星空を1人眺めるノーマンは、エマとレイを思い浮かべる。

「エマ・・・レイ・・・」

しかし突如、頭を抱え込み咳き込むノーマン。口元を抑えていた手のひらは、鮮血で染まっていたー



ー2047年11月10日、儀祭(ティファリ)当日。

「始めよう」

合図をするノーマン。王都の至る所で爆破がおきる。

崩れ落ちる建物に逃げ惑う鬼達。それに乗じて、城内の見張りを倒していくシスロとバーバラ。ヴィンセントもセキュリティラインを制圧したようだ。

門の鉄柵が上がっていき、ギーラン家一行が城へと入って行く。


王都の兵は推定5000。それをノーマンの策で事前に1000まで減らせている。現在、城下に700、城内に300。

城下の700は混乱する民衆と爆破した外橋・城下への対処で手一杯。加えて城門は全て閉ざしたので城下と城内は断絶されている。外橋も全て落としたので、外からも孤立無縁状態だ。

城内に300。対するギーラン兵は約50。

“これなら動ける”

城内の兵を倒し、城の奥へと進軍して行くギーラン家一行。


王の間に集まっている女王と五摂家ら。城内から聞こえてくる不審な音に、様子を見てくるよう臣下を行かせるも、扉の前で固まる臣下。

「賊ー」

斬りつけられ地に伏す臣下に驚く五摂家たち。

「久しいのぅ」

ギーラン卿は被っていた布を脱ぎ、自らの顔をさらけ出す。

ここは危ない。プポ卿は自分の父と母に下がるよう伝えるも、後ろを振り返った瞬間、母に目を刺されて絶命。

五摂家の家族は本物ではなかった。ギーラン家が五摂家の家族を食べて、化けていたのだ。

野良に落とされ700年。この日をどれだけ待ちわびていたことか。忘れたことなどない。受けた仕打ち、屈辱、苦しみ、悲しみ、憎しみー

これまでの道のりを振り返るギーラン卿。

「次はぬしらじゃ　我らが怒り　存分に味わわせてやる」

母の仮面を両手で握り、震えるバイヨン卿。

ギーラン卿へ飛び掛かって行くがー


ー700年前

近年、下級農園の生産が追いつかず、各地で飢えが絶えない。このままでは民は滅びてしまう。自分達貴族の備蓄を一部解放しよう。

当時、五摂家であったギーランがそう提案するも、反対する先代ノウム卿とプボ卿。

治める民あっての統治、民を守らずして鬼の繁栄はない。自分達のためにも統治のためにも、貴族が身を削り救うべきだ。

再度そう訴えかけるギーランに、落ち着こうと声をかけるイヴェルク公。

問題は農園の整備。農園の在り方を現在見直している。まずは待とうと言うイヴェルク公。話し合いはお開きになる。


なぜこの危機が解らないのか。皆、自分の利益しか考えていない。

焦るギーラン卿に声をかける家臣の”ドッザ将軍”。

これほどの知と富を持ちながら、それを惜しむことなく領民に分け与えている。これほど民や家臣に慕われている領主はいない。義は必ず届く。自分もどこまでも支え続ける。

そんなドッザの言葉に胸を打たれたギーランは、ドッザにある場所へ向かって欲しいと頼む。邪血の少女の噂を耳にしたのだ。その力が本当なら民の飢えを何とかできると考えたギーラン。

馬を走らせるドッザ。

しかしすぐにギーランは兵に捕まってしまう。兵にどういうことだと尋ねるギーラン。

「妖しげな血の者を使い王政の転覆を企てた大罪のー」

その言葉を聞いて全てを把握したギーラン。ドッザが謀ったのだ。

自分も一族も潔白の身。イヴェルク公を呼んで無実を証明するも、知っていると返されてしまう。

全てはドッザのでまかせ。しかしギーランの”義”や”正しさ”が邪魔だと話すイヴェルク公。そしてそれは女王も同じ。

野良落ちの刑に処されるギーラン家一族。


家族は死んだ。失った家臣も皆かけがえなかった。こんなものではない。我らの700年ー

時は戻り現在。バイヨン卿とノウム卿の首を食べるギーラン。ドッザは立ち向かって行くも、即座にギーランの臣下にやられてしまう。

その様子を天井裏から見ていたシスロとバーバラ。

「あと２匹」

ここまでの手筈や所要時間、力の差など全てノーマンの計算通りだった。しかしまだ手は出さない。

女王レグラヴァリマとギーラン軍、存分に潰し合い消耗させる。そうして生き残った方を人間が殺す算段だ。


ー時は少し遡り、王都へと無事に潜入したエマとレイ。

ノーマンは恐らく城の中。急ぐ２人だったが、街中の至るところで爆破がおこる。ノーマンの攻撃が始まってしまったのだ。

焦るエマとレイに誰かが声をかける。２人が後ろを振り向くと、そこにはドンとギルダの姿が。ハヤトとアイシェも一緒だ。そしてその後ろにはムジカとソンジュの姿もあった。

エマはムジカを泣きそうな目で見つめる。そんなエマを抱きしめるムジカ。

「大丈夫　ありがとう私達鬼のために」

そんなムジカの言葉に無事でよかったと返すエマ。

エマはみんなに無事に”約束”を結べたことを伝える。喜ぶドンとギルダだったが、オリバー達はどうしたのかとエマに尋ねる。


ー2日前の朝

馬に乗り王都を目指していたエマ達は、鬼の兵の大群を目にする。どこかに向かっているようだ。王都とは逆方面に進んでいる。

「まさか　食用児(オレたち)のアジトを探しているのか・・・！？」

エマは馬から降り、オリバー達はアジトへ戻って万一に備えるよう伝える。

あの鬼の大群は一部。もし更に何倍もの大群にアジトが見つかったら、その被害はラートリー家に襲われた時の比ではないと言うレイ。

心配になるエマだったが、こっちは任せろと言いオリバー達は２人を見送る。


だからさっき王都に着いたばかりなのだと、ドンとギルダに説明するエマ。

レイはもう１つヤバいことがあると言い、あるメモを２人に見せる。ノーマンがつくらせたある”毒”のレシピだ。

ノーマンは恐らくこれを民衆にも使って、まずは王都の鬼達を絶滅させるつもりだ。まだ何も起きてないが、既にきっと仕掛けている。

もし自分達が戻る前に事が起きたら、できる限り被害を抑えてほしいと２人に伝えるレイ。ムジカとソンジュがいればこそ、一層被害を食い止められる。

ソンジュはエマに、ハヤトから奪った発信器を渡す。城に入って助けが必要な時はこれで呼べと言うソンジュ。

「あっエマ　それからもう一つ」

エマを引き止めるギルダ。


話を聞いたエマとレイは城へと走り出す。

“急げ間に合え　ノーマンの元へ！！”

エマとレイは城の中へ入るも、全ての門の柵が塞がれている。ヴィンセントの仕業だ。

上の方に小さな入口を見つけたエマ。柵はないようだ。

レイは両手を前へ出し中腰の体勢に。エマは助走をつけレイの両手へと飛び乗り、上空へとジャンプする。



ーギーラン家に囲まれる女王とイヴェルク公。

ギーラン家が件(くだん)の盗難賊徒であれば、ラダムや系列農園で盗んだ人肉を食べているはず。しかし彼らは野良に近い姿で現れた。

この襲撃、いや件の盗難自体から黒幕は別にいる。これだけの手際、一体誰なのかー

そう考えるイヴェルク公を下がらせる女王。政治上の実務は実質イヴェルク公が担っているため、死んでしまうと困るからだ。

「さあ次は貴様の首だ」

ギーランの臣下たちは女王へと飛び掛かっていく。一瞬にしてギーランの臣下達を殺していく女王レグラヴァリマ。

しかし彼らは怯むことなく前進して行く。


ー700年前

ギーランの”野良落ち”を知った家臣達は、イヴェルク公に申し立てるも、逆らう者は全員同罪とし”野良落ち”に処すと返されてしまう。

自分達のことはいいから君達まで刑をかぶることはないと諭すギーラン夫妻。家臣達の思いは一つだった。

ギーラン家と共に”野良落ち”の刑に処された家臣達。

ギーランの妻やその他家族はその刑の過程で亡くなり、ギーラン本人や家臣達は、元領民達が自らの体を差し出したことにによって、生き繋がれてきた。

女王に切り刻まれても、立ち上がって立ち向かう家臣達。

1人が女王の背後へと回り剣を振りかざすも、すぐさま見つかり顔面を斬られてしまう。

しかしその体に何かが撒きつけられていることに気づく女王。ダイナマイトだ。

「ギーラン王に栄光あれ！！」

その言葉と同時に爆破が起こりー

煙幕の中から出て来たのは無傷の女王だった。

しかし身動きがとれない女王。体に何かが粘着していた。ギーランの家臣達があらかじめダイナマイトに仕込んでいたのだ。

その間に死んでいった仲間達を喰らうギーラン。

“我ら全員で女王を討とう”

ギーランは背後から近寄り、女王の頭へ一撃を喰らわす。しかし面は硬く一回では割れない。

ギーランは何度も殴り、女王の面がやっと砕ける。刀を抜き、女王の顔へと振りかざす。

しかし一瞬にして体が粉々になってしまうギーラン。

再生を試みるも、女王によって顔ごと踏みつぶされ絶命。

女王がギーランの顔を拾い上げ食べようとすると、突如銃弾が飛んでくる。部屋中に転がる死体にもなぜか撃ち込まれていく銃弾。

女王が扉の方へ目を向けると、そこには１人の人間が立っていた。ザジだ。

ザジは一瞬で女王の目の前まで距離を縮め、目を狙い刀を振るう。頬から血を流す女王。

その背後には、シスロとバーバラの姿も。


再生・変異・身体強化。それら規格外の力を発揮する細胞分裂に、鬼は莫大なエネルギーを消費する。鬼も生き物、限界があるのだ。

つまり連戦こそが弱点。補給(たべ)なければ戦えない。肉を食べさせてはいけない。

“攻めて攻めて攻め続ける　そこに人間の勝機がある！”

ノーマンの言葉を思い返すシスロとバーバラは、間髪容れずに攻撃を仕掛けていく。

実際に女王の動きは確実に鈍くなっていた。消耗した今なら人間でも戦えるー

「ザジ！！背中は任せろ　思いっきり行けーー！！」

バーバラが叫ぶと、ザジは女王へと飛び掛かる。しかしザジの後ろを守っていたバーバラが腹を貫かれてしまう。

すぐに体勢を変え、バーバラを掴む女王の手を斬り落としたザジ。怒りに満ちたザジは、その勢いで女王へと刀を振るう。

それを両手で受け止める女王。手はすぐに再生していくも、何かが体を巡っていくことに気づく。

その様子を見ていた女王の家臣やイヴェルク公にも異変が現れる。毒だ。

鬼の正常な細胞分裂リサイクルを阻害し、形質保持能力を壊す。強制的に退化を促す毒薬。死体に撃ち込まれた銃弾、そしてザジの刀にも仕込まれていたのだ。

同じ頃、中央広場でも毒による混乱が起きていた。

レイの予想によると大量生産はできていない。とすればノーマンが毒を城下に撒く一番の狙いは、”混乱”だ。

その予想通り、中央広場では退化した鬼達による混乱が起きていた。ドンとギルダ、そしてムジカ達は被害を食い止めるため、急いで広場へと向かう。


女王の武器である爪はもう伸びない。この機を人間は渡さないー

女王に斬りかかるザジ。

女王の左腕を拘束し動きと止めるシスロ。ザジは女王の顔、急所の目へと刀を振るう。



一番でいたい。誰よりも強く誰よりも美しく、誰よりも高みに君臨する。我は王の子。

親兄弟もただの糧。王になりしかし全てを手にしてなお唯一意のままにならなかったものー


床に転がる女王の目玉。その目に映ったのはノーマンの姿だった。

「初めまして　女王陛下」

ノーマンが全ての黒幕だったことに気づく女王。自分がノーマンをラムダに送ったと話し始める。

理由は自分が最上級の肉を食べたかったから。

食いたい食いたい食いたいー

「誰にも渡さぬ！！！お前は私の人肉なのだ！！」

女王の叫びに、自分達は誰一人鬼の食料ではないと鬼語で返すノーマン。ザジに指示し、女王の目玉を刀で突き刺し絶命させる。

残るはイヴェルクのみ。貴族の全滅、政治の壊滅。残る庶民はもう絶滅させる以外に無い。

「全てが終わるんだ」



ーエマとレイは急いで城内を進んで行く。

“ノーマンもう大丈夫　今行くよ　”約束”も結べた　もう戦わなくていいんだよ”

王の間へと辿り着いた２人。

扉を開けると、そこには鬼の死体が山ほど転がっていた。

驚愕する２人。振り向くノーマン。

「残念　間に合わなかったね　エマ」