『約束のネバーランド』18巻【ネタバレ有】本心を明かしたノーマン、３人はアジトへ戻るがもぬけの殻で！？

エマとレイはノーマンの元へと辿り着くも、時すでに遅し。床には大量の鬼の死体が転がっていた。

エマは一瞬動揺するも、”約束”が結べたこと、そしてもう戦わなくていいことをノーマンに伝える。

政治の要であるイヴェルクも殺してしまった今、鬼の統治ならびに人間との和平など不可能。絶滅しかないと言うノーマン。

しかしエマは引き下がらない。

戦わなくていいのに殺戮や戦争する意味が分からない。ノーマンは頭がいいから確実な道を選んでるだけ、優しいからみんなの分まで背負っているだけ。絶滅させたいなんて思ってない。自分に嘘をついているだけ。

「私には今のノーマン　怖くて震える小さな子供に見える」

エマの言葉に思いを巡らせるノーマン。

確かにずっと怖かった。でも手段なんて選んでいられない、止まってなんていられなかった。僕は強い、大丈夫。お前は勝てる、闘える。あと少しー

「来ないで」

近づいてくるエマを拒絶するノーマン。しかしエマは近づいて行き、ノーマンの手を握る。

鬼が怖い、人間の世界が怖い。自分の甘さゆえエマやレイやみんなが殺されるのが怖い。だから確実な道を選んで全て1人で背負っている。

自分の気持ちに気づいたノーマンに、辛いことも苦しいことも怖いことも一緒に背負わせてと言うエマとレイ。

ノーマンが城下に撒いた毒のことも、ムジカ達にしようとしたことも、地下での”実験”も知っている。それでも一緒に迷ってもがいて一緒に笑おうと語りかける２人。

“生きたい、エマやレイと一緒に”

ノーマンは泣きながら２人を抱きしめるも、自分達はもう長くは生きられないとこぼす。

「助けて　エマ・・・レイ・・・」

その言葉に驚く２人、そしてヴィンセントら。

ノーマンも他のラムダの食用児同様、投薬実験を受けており発作も進行していたのだ。気兼ねや気遣いさせたくなかったとメンバーに謝るノーマン。

そして、これ以上は殺さずに済むのなら誰も殺したくない。それがノーマンの本心であった。
今更何なんだと怒りを露(あらわ)にするヴィンセントを、もう十分だろと止めるシスロ。

ボスの苦しみや本当の気持ちに薄々気づいていた。なのに復讐の道具に利用してしまった、ボスも1人の人間なのに。ボスはボスの好きにしていいと話すシスロ。

「俺はあんたについていくよボス」

シスロの言葉に頷くバーバラとザジ。


エマとレイはまずラダムの発作について話し始める。

ラダムで実験体に出されていた、特定の試験薬が原因で起こっている致死性の薬害と発作。しかしドンとギルダがあることに気づいたのだと話す２人。それはアダムには発作が起きていないということ。

ラダムを出されて約２年、一度も発作が起きていない。アダムにラダムのみんなの命を救える突破口があるかもしれないー

ただのんびりもしていられないと言うレイ。王兵の大群がアジトを探しているからだ。城下の混乱を何とかした上で、早く王都を出てアジトに戻らなければならない。

城下にはドンとギルダ、そしてムジカとソンジュが被害を出来る限り抑えてくれている。自分とレイは王都に残り城下の対処、ノーマン達は今すぐ戻ってアジトを守るよう伝えるエマ。

了承したノーマンは、メンバーにそれぞれ指示を出していく。その背後で立ち上がる影が一つ。女王だ。

女王は大きな口を開き、ノーマンへと向かっていく。

一方、城下ではドンとギルダ、そしてアイシェが退化した鬼達から民衆を守っていた。しかし殺さずに動きを止めるのは至難の技。おまけにすぐ再生してしまう。

ムジカ達の血は退化した鬼を人型に戻せる。この毒にも、もし効けばー

ギルダがそう考えていると、ソンジュは自分の片腕を斬り落とし、退化した鬼の口へ放り込む。

人型へと戻っていく鬼。どうやら効いたようだ。

ムジカもまだ退化していない民衆たちに、自分の血を分け飲ませていく。



ノーマンへと襲い掛かる女王。

すぐさまシスロが走り、ノーマンに覆い被さる。

鈍い音が響いたと同時に絶叫するシスロ。片足を女王に食べられてしまったのだ。

シスロの応急処置をするノーマンとエマだったが、女王の様子がおかしい。

突如、女王の体から白い何かが無数に飛び出す。それは手の形となり、床で息絶えている自分の家臣やギーラン一族の死体を掴むと、自分の体に吸収していく。

触れる物を手当たり次第に捕まえて食べているのだ。毒で汚染した死体もおかまいなしだ。

核を破壊したのに動いている女王の体。女王は核を壊しても死なないのか、もしくは王あるいは王族には核が複数存在するのかー

ノーマンはヴィンセントにシスロ達を連れて先にアジトへ戻るよう告げる。自分はザジと残り、エマとレイと共に女王を何とかするようだ。

女王の体が動き出す。次は何なのかー武器を持ち、構える４人。

『エマ　レイ　ノーマン　お久しぶり』

その声に気づいたエマが振り返ると、そこにはシスタークローネの顔が。

驚くエマ。

女王の体には、ギーランの顔やイヴェルクの顔、ハウスの子供達など、恐らくこれまでに食べた人間や鬼達の顔が浮かび上がっていたー

女王の家臣やギーラン一族、ハウスの子供達の顔が一つの膜となっていた。

その膜からパキっと音を立て、割って出て来た女王。その頭部には顔がなかった。

「あなうれしや」

目を覚ましたら目の前に、最高級ＧＦ(グレイス＝フィールド)の特上３匹がいると喜ぶ女王。

ラダムの食用児もグレイス＝フィールドの脱走者も、皆、自分が食べるー

いつの間にか女王の手中にいたザジ。

ザジはすぐさま振り向き女王を真っ二つに斬るも、すぐに再生してしまう女王の体。女王がザジの首に手を当てたと思った瞬間、ザジはそのまま吹き飛ばされてしまう。

ノーマンがすぐさま駆け寄るも意識がないようだ。

エマとレイは銃口を女王へ向ける。

銃なんて多分撃っても効かない。それでもヒントを得る意味では充分ー

しかし２人の体は動かなかった。

“怖い”

その感情が２人を支配していく。

女王の手がエマの頬へと添えられた瞬間、女王の体に無数の槍が打ち込まれる。エマとレイが上を見上げると、そこにはソンジュとムジカの姿が。

女王が復活したと分かった瞬間、エマがすぐさま発信器を押していたのだ。

城下は粗方大丈夫だと報告するムジカ。ドンとギルダも抜け道を使って王都をじきに出れるそうだ。

よってあとは女王のみ。

和平どころか交渉も見込めないと言うソンジュに、邪血の始末と脱走者の奪回が一纏めにして片付くと返す女王。

ソンジュもムジカもケリをつけにここへ来たのだ。

“700年　もう充分逃げ回った”

今までを思い返すムジカ。

「終わりにしましょう」

その言葉を合図に槍を構えるソンジュ。

「女王　あんたは今日ここで俺が殺す」

ソンジュの言葉に笑いをこぼす女王。

殺す？お前が？私をー？

「げに愚かな弟よ」



ー700年以上前

森の中で人間を狩るソンジュ。その傍らには”先生”と呼ばれる鬼の姿が。

背中から血を流して倒れた人間。しかしまだ生きようとしていることに気づいたソンジュ。それが命を狩ることだと”先生”は話す。

全て命、生きとし生けるもの全て神がつくりし尊き命。我々は命を狩り合い命を繋いでいる。そして狩りは”借り”。贈られたものではない。全て神から借りているものにすぎない。

だから敬意を払いなさい。自分の命にも他の全ての命にも。驕(おご)らずに分け合いなさい。そして自分で神より借りて神に返す。これは我らの守るべき道理。これが我ら永久(とこしえ)の道理(みち)だと話す先生。

たとえ王にならずとも、王を守り支えるために決して忘れてはならないー

“弟”、その言葉に耳を疑うエマ達。

邪血を連れて逃げた裏切者だと話す女王に、裏切者はあんたらだと返すソンジュ。私欲のため”守るべき道理”に背き、”約束”で全てを歪めた。その上邪血を独占し抹消しようとしたのだ。

女王は一体何者なのかとムジカに尋ねるレイ。女王レグラヴァリマには核が２つある。１つ目を潰した今、２つ目の核で復活したのだとムジカは話す。王族にはごく稀に、そういう子供が生まれてくるそうだ。

ソンジュはもう１つの核の位置に見当がついていた。最初に槍を投げて攻撃した時、僅かに体をひねってかばった場所。腹だ。

ソンジュは目にも視えぬスピードで、女王の腹を斬り裂く。しかしソンジュの槍は粘着質な何かに捕らえられ体から抜けない。ギーランの配下が持っていた形質だ。

槍は刺したまま女王から距離を取るソンジュ。女王は返すと言って、槍をソンジュの腕へと突き刺す。

確かに核は腹にあると言う女王。しかしそれを知っても何も変わらない。何もできないさせない。これが選ばれし者の感知する世界。世界は全て自分の物。全ての命は自分の糧となるー

「妾(わらわ)は誰よりも食うて　誰よりも強い！！」

女王はムジカに向かって攻撃を仕掛ける。しかしその場から全く動かないムジカに、自身の伸ばした腕を止める女王。

なぜ下がらないのか、女王の問いに答えるムジカ。

「あなたはなぜ　そんなひもじく飢えているの？」

生まれた時から周りとは違ったムジカ。

何を食べても形質は変わらず、人肉を食べずとも姿・知能を失わない。まさに「奇跡の子」。

飢えに苦しむ村々を救った。しかし仲間は殺され、生き残ったのは自分だけ。自分だけが生き残って、700年も逃げ回っている。

自分は特別なのか、異端なのか。なぜ生きているのか。何のために生まれてきたのか。

生まれてきてもよかったのかー

親も仲間も全てを奪った女王。

言いたいこともぶつけたい想いも山ほどあった。

けれど、ムジカの目に写る彼女は憐れで可哀そうだった。

誰よりも豊かで何でも手に入る。だけどいくら食べてもいくら手に入れても、いくら上りつめても満たされない心。

「本当は何が欲しかったの？何を恐れているの？」

際限のない欲望に囚われ、神への敬意も忘れ世界(いのち)を貪り、結果自らを破滅に導いてきたことに気づいていないのだと女王に言うムジカ。

女王はその言葉をくだらないと切り捨て、自分は特別で恐れるものなど何もないと返すと、ムジカに向かって攻撃を仕掛ける。

しかしその瞬間、破裂する女王の体。

大量の死体と毒、つまり細胞を一度に取り込みすぎたのだ。食べた物を全て”そのまま”引き出せた時点で、それらを充分に消化しきれてなかったのだと話すムジカ。

女王の頭には、今まで食べてきた者たちの意識や記憶が一気に流れ込んできていた。


ー700年もの間、自分が生まれてきた意味を考えていたムジカ。

かつて鬼は”約束”を結んだ。人間と棲む世界を分け隔てた。

エマ達と出会ってようやくわかったー

「私は我ら種族(おに)を変えるために生まれてきたんだ　そして今こそ鬼世界は変わる時なのよ」

地位、名誉、富、美食、強さ、称賛。

全てを手に入れたが、欲しかったものはこれではなかったのか。

本当に欲しいものは他にあったというのか。それが手に入ればこの渇きは満たされたのかー


過剰摂取により取り込んだ細胞をすべて消化しきれず、そのまま息絶えた女王。

気を失っていたザジも目を覚まし、ノーマンやエマ、レイの３人は安堵する。

しかしここからどうするかが問題だ。王も五摂家も殺し尽くしてしまった今、和平交渉どうこうではなく、このままでは各地で混乱や暴動、下手すれば戦争になってしまうと話すレイ。

ムジカは鬼の問題は自分達で対処するから、エマ達にとにかくアジトへ急ぐよう伝える。人間の存在が見えない方が事態を収めやすいのだ。

早く行きなさいと促すムジカを抱きしめお礼を伝えるエマ。ソンジュも抱きしめお礼を伝えていく。


この２年、色々なことがあった。

色んな鬼も見たし、鬼について自分達について、食べるってことや命を奪うことについていっぱい考えた。そして”死”についても考えたと話すエマ。

家族を殺されるのも食べられるのも嫌。それが自分でも絶対に嫌だけど、想像してみた。もし自分が死んだらー

「ソンジュとムジカになら食べられてもいいって思った」

今の自分が生きてここまで来れたのは、２人に出会えて助けてもらったから。本当にありがとう。

エマは２人に感謝を伝え、アジトへ向かうためレイとノーマンと一緒に走り出す。

王兵を動かしているのは恐らくピーター・ラートリーだと話すノーマン。


ー数日前

水面下での収拾はもはや不可能だと考えたピーターは、全てを女王に話していた。賭けに等しい捨て身の一手だ。

ラムダの崩壊は盗難賊徒の仕業ではなく、ラムダの食用児もグレイス＝フィールドの脱走者もまだ生きている可能性が高い。そしてその食用児達が農園を潰しつつ隠れている。

脱走者を捕らえて女王の御前に献上するため、討伐軍の半数を自分達に貸してもらうよう女王に願いを請うピーター。

それを笑い飛ばす女王。直近だけでも数多の農園は大損害を被っている。更に先代バイヨンの”狩場”の件にピーターが加担したおかげで、ドッザやバイヨン、ノウム達は愛する家族を失っている。

だからこそ儀祭(ティファリ)まで片をつけたいと話すピーター。

もし他の五摂家にこの件が知られてしまえば、脱走者の身柄は皆で取り合いになってしまう。

「私は”陛下”に献上したいのです　誰にも知られず陛下のみに」

その言葉に反応した女王は、兵の半数をピーターに貸し与えることを許可するー



アジトへと急ぐエマとノーマン、レイの３人。

アジトの場所は知られてないはずだが、ダミーの痕跡から辿られている可能性もある。

1000年前にこのシステムをつくった元凶。ゴールディ・ポンドに狩場をつくって大勢の子供達を苦しめたピーター・ラートリー。ミネルヴァさんの仇でありユウゴ達の仇ー

今までのことを思い返す３人。


アジト付近へと到着すると、待ち構えていたドンとギルダ達。まずは現状の把握をしなければならない。オリバー達と合流しようと言うエマ。

木を潜り抜けアジトへ向かって走って行くと、ヴィンセントやシスロ達に出くわす。ノーマンのことが心配で待っていたのだ。

そこへタイミング良く駆けつけたオリバー達。

「大変だ　みんな・・・アジトが・・・！」

オリバー達はエマ達と別れた後、アジトへ真っ先に向かったが既に襲われていた後だったのだ。別動隊が他にも複数おり、確認できた限りで敵の総数は約2000。みんな連れ去られてしまっていた。

アジトで待ち伏せしていた鬼に居場所を吐かせたと言うナイジェル。食料として処理されるため、ここから一番近くて守備も堅固な高級農園に子供達は移送されたと言う。

その場所はＧＦ農園(グレイス＝フィールドハウス)。

驚愕するエマ達。

敵は王都襲撃時に城内で捌いた数のおよそ７倍。そしてあの時はギーランがいたが、今は鬼にぶつける勢力もいない。こちらはわずか十数人、かつ最大戦力のラダム３人が手負いの状態だ。

今回ばかりは勝ち目はないのかー

みんながどうすればいいのかと歯を食いしばる中、ＧＦ(グレイス＝フィールド)へ行こうと言い出すエマ。

「できないどうしよう」って考えるより、「できる！どうやろう」って考える方が絶対にいい。ノーマンとレイ、自分の３人も揃っている。みんなもいる。

檻の中に生まれたちっぽけな自分達が、世界をここまで変えてきた。そして今、あと一歩まで来ている。自分達ならできる。

みんなを鼓舞するエマの様子を見て、笑い出すノーマン。エマが言うと本当にできるような気がしてしまうからだ。

失敗だって後悔だってたくさんあったけど、それを恐れてたら見えるものも見えなくなると話すレイ。

これから殺すならまだ全員生きている。ＧＦ(グレイス＝フィールド)の設計図だって、ミネルヴァさんがくれたデータに入ってる。

決起する子供達。

泣いても笑ってもこれが最後ー

「行こう！家族(みんな)が待ってる！！」